「エッジ」で勝負するか?「ソーシング」で勝負するか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

「エッジ」で勝負するか?「ソーシング」で勝負するか?

 最初にお知らせです。大阪で8月にマネックス証券の松本大とパネルディスカッションを行います。元トレーダーと元ファンドマネージャーの考え方の違いが、投資の参考になれば幸いです。

『マネックスの10年とこれからの投資』
https://seminar.monex.co.jp/public/seminar/view/1220

 さて、マネックス証券のサイトは今朝からカブロボ一色に染まっています。今日から募集開始のカブロボファンド。気合が入りまくっているのがよくわかります。このファンド、販売上限は150億円です。詳細は下記のページにてご確認ください。

http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2009/news907e.htm
■ カブロボの分類は日本株ではなく、オルタナティブ
 このカブロボファンド、日本株が投資対象です。運用会社の説明によれば、ロボット4体が投資対象となる500銘柄から銘柄と売買タイミングを判断し、収益を積み上げる手法です。年間想定の売買回転率は普通の日本株ファンドの約30倍を想定。短期の売買を繰り返す運用です。

 投資対象は日本株ですが、インデックスを意識しないで、絶対収益を追求していく商品ですから、これは日本株ファンドというより、オルタナティブファンドと考えるべきでしょう。ライバルはTOPIXではなく、アジアフォーカスのようなヘッジファンドです。

■ ロボットが市場の歪みを見出すのがエッジ
 オルタナティブ投資商品の収益の源泉は、「エッジ」と「ソーシング」で決まると言われます。エッジ(Edge)とは他の運用には無い特別な運用スキルやトレードアイディアのこと。そしてソーシング(Sourcing)とは、投資対象への特別なルートや人脈を持っていることを指します。

 カブロボファンドの場合、ロボットにエッジがあるかどうか、が収益を上げられるかどうかの分かれ目です。誰でも売買できる日本株の現物取引ですからソーシングで差別化できる訳ではありません。

 長期分散投資とは対極の運用手法ですが、トレーダーが売買を繰り返すのに比べると人間の感情を排した分エッジが効いていると言えます。

 もし銘柄選択やタイミングにおいて、ロボットが人間を上回るという結果が出れば、長期分散投資にロボットを組み合わせる、新しい投資手法が可能になるかもしれません。トレーダーとファンドマネージャーの良いとこ取りです。
■ ソーシング能力で勝負するワインファンド
 今週、今度はソーシングで勝負する、オルタナティブ投資商品の話を聞くことができました。ワインに投資をする、ワインファンドです。

 ワインに詳しい目利きの人はたくさんいますが、プリムールと呼ばれる熟成されてビンの詰められる前の樽詰めワインは誰でも買えるものではありません。ワイン醸造者との長期にわたる取引実績によって、割り当てが決まるのです。
 ヴァンネットは2001年からワインファンドを作り、フランスの5大シャトーやロマネコンティといった、需要が大きく市場価値の高い、売買しやすいワインの作り手との関係を構築し、プリムール価格でワインを調達できる体制を整えています。長年の関係からソーシング能力に強みを持っているのです。
 高級ワインへの投資はその年のワインが消費されるにつれ供給が減っていくこと、熟成によって価値が上がっていくこと、から長期投資の1つの方法として欧州の保険会社も行っていると聞きます。

 ただし、日本の投資家には為替リスク(ユーロ安はリターンにマイナスの影響)がありますし、投資商品として株式や債券とは違ったリスク(ワインの保存リスク、ワイン市場の暴落リスク、商品の仕組みのリスク)もあります。
 充分な検討を行った上で最終的な投資判断を行うべきであることは言うまでもありません。(ワインファンドはマネックス証券では販売しておりません。)
■ オルタナティブ投資は「目利きの目利き」が難しい
 オルタナティブ投資においては、自分が投資先を目利きするのではなく、専門家の目利きを見つけて、その人を目利きする。つまり「目利きの目利き」が大切です。カブロボであれば、ロボットが目利き役、ワインファンドであれば、営業者の役員会が目利き役です。

 オルタナティブ投資商品は、株式や債券といった伝統的金融資産との相関関係が低く、分散効果が高いのが魅力と言えます。自分が目利きできる、と思った商品を資産全体の10%程度を目安に組み入れてみるのが良いと思います。
今回の話のまとめ---------

■ オルタナティブ投資は「エッジ」と「ソーシング」で決まる

■ カブロボは銘柄選択とタイミングというロボットのエッジで勝負

■ ワインファンドはソーシング能力が差別化のポイント

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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