2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
週末の大阪で開催される決算説明会&パネルディスカッションには定員を超えるたくさんの方からお申込みいただきました。ご来場の皆様、明後日よろしくお願いいたします。
さて、マネックス証券の特別動画企画で、JPモルガン証券のチーフエコノミストである菅野雅明さんにお話を伺う機会がありました。菅野さんは、元日銀でマクロ経済の分析をされていた経済分析のプロ中のプロです。経済の見方からこれからの世界経済の見通しまで、他では聞けない幅広い内容をわかりやすく語っていただきました。
■ 短期的にはとても強気
菅野さんのこれから半年程度の短期的な見通しですが、株式市場に対しかなり強気です。中国での景気回復が日本、米国、欧州の順番で広がっていくことが想定される中、そのような世界的な景気回復がまだ株式市場に織り込まれていない、というのがその根拠です。
そして為替に関しては先進国の主要通貨(ドル、ユーロ、円)の関係は大きく変わらない。一方で新興国や資源国(ブラジル、オーストラリアなど)の為替は上昇の可能性があるという見方をされてしました。
今後の実体経済の動きをチェックするための指標として、鉱工業生産状況を世界的規模で速報でつかめるグローバルPMIインデックスを定点観測する指数として挙げていました。これは、マネックス証券が提供しているJPモルガンのリサーチペーパーでも紹介されています。
JPモルガンのリサーチペーパー
http://www.monex.co.jp/ServiceInformation/00000000/guest/G100/srv/report.htm
■ 長期的なことはシナリオ次第
一方、長期的な見通しは、これからの政策対応や企業活動によってダイナミックに変わっていくため、シナリオは立てられるけど、予想はできない、というのが基本的な考え方です。
その中でリスクとして指摘されていたのは、次のようなポイントでした。
・先進国における財政、金融の政策転換のタイミング
・欧米の不良債権処理がどのように決着するか
・日本を含む先進国製造業の過剰設備のスクラップが効率的に実施されるか・先進国の財政悪化と増税
長期的な見通しは、このような不確定な要素がどのようになるかによって変わってきます。リスク要因を整理しておいて、それらがどうなるかでシナリオを考えておくのが現実的な対応ということです。
■ 世界経済を考える3つのポイント
さらに、もう少し大きなピクチャーで世界経済を考える際、菅野さんが指摘されていたのは、通貨に対する信任、インフレ、そして先進国から新興国へのシフトです。
通貨に対する信任とは、ニクソンショック以降、管理通貨制度へ移行してきた世界の金融制度が、このまま維持できるのかという疑問です。今後、通貨に対する信任が揺らいだ時、どのような対応策が考えられるのでしょうか。通貨への信任低下は実物資産への資金シフトをもたらす可能性があります。
インフレに関しては、日本の投資家が海外の投資家に比べインフレに対し警戒心が低いことを指摘しています。15年以上デフレ基調が続く日本においては、インフレを語ると狼少年のようになっていますが、そのリスクは想定しておくべきだというご意見です。
そして、今よりも先進国から新興国へ経済がシフトすることは、経済成長率の違いから考えると可能性が高いということです。そこで問題になるのが、先進国と新興国の協調ができるか、です。利害の対立が解決できなければ、世界経済の成長の障害になるかもしれません。
■ 個人投資家が考えておくべきこと
そのような見通しの中で、個人投資家が考えておくべきこととして、3点が印象に残りました。
まず、銀行預金への幻想を捨てよということです。貸出先が見つからない銀行は、預かった預金の一部で国債を購入している。預金をしても国債を買っているのと一部は同じこととなります。
そして、株式や債券のようなペーパーマネーと不動産や商品(コモディティ)のようなリアルマネーとのバランスを考えることがより重要になるということです。投資イコール株式や債券を買うこと、という投資スタイルが変わるかもしれません。
最後に新興国への投資をリスクを考えながらどう進めていくかを真剣に考えようということ。成長する経済に投資をするのは良いのですが、変動の激しい投資対象なので投資の方法を慎重に考える必要があるということです。
菅野さんとの特別対談動画は、現在編集作業中で来週の前半にはマネックス証券のウェブに掲載される予定です。トップページの最新情報にも表示されますので、これからの投資のヒントにしてください。
今回の話のまとめ---------
■ 短期は予測する、長期はシナリオで考える
■ 大きな視点で予想できないことが起こる可能性も想定しておく
■ 個人投資家としてこれからのお金との付き合い方を整理しておこう
では、また来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/
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