インデックスファンド競争に個人投資家はどう対応すべきか

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

インデックスファンド競争に個人投資家はどう対応すべきか

インデックスファンドの競争が激化しています。STAM(住信アセットマネジメント)がパイオニアとして充実したラインアップとノーロード低コストということでインデックス投資家の支持を集めてきましたが、競合ファンドとしてeMAXISが発表され、三井住友アセットマネジメントもコスト競争に参入しました。以前想定したことが現実化しているわけですが、そのスピードは思ったよりも早いようです。

1月のインデックス投資ナイトに関するコラム(バックナンバー)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2009/01/16.html

今後、さらにコストの低いファンドが登場する可能性もあり、どのファンドを選んだら良いのか、悩んでいる方も多いと思います。マネックス証券の取り扱いはSTAMシリーズだけですが、他のファンドとどう比較して考えたら良いのでしょうか。

■ 基本はノーロードで信託報酬が低いファンドを選ぶ
インデックスファンドの基本は低コストです。アクティブファンドと違い、ファンドマネージャーの銘柄選択や投資タイミングによるファンド間の運用格差があまりありませんから、コストが低ければ高い運用成績になる可能性が高いのです。

■ コスト以外のチェックポイントがある
信託報酬だけを見ると、新しく登場したファンドほど低くなる傾向があります。「後出しジャンケン」ですから、コスト面ではより競争力のある信託報酬を提示するのは、ナンバーワンを目指すのであれば当然といえるかもしれません。

しかし、現時点の信託報酬だけで機械的に決定するのは賢明な方法とは言えません。信託報酬以外に確認しておきたいポイントを挙げておきましょう。
1.信託財産留保金
同じ投資対象のインデックスファンドであっても、信託財産留保金がかかるものとかからないものがあります。信託財産留保金とは投資信託を解約するときにかかる他の投資家の方への「迷惑料」のようなものですが、金融機関の収益ではなく、他の投資家の資産となります。解約時のこのような仕組みによって過剰な売買を防止し、投資家間の公平性を保つ効果もあります。

信託財産留保金はあった方が良心的なファンドではないかと私は思います。 
2.ファンドのトラッキングエラー
トラッキングエラーとはインデックスとファンドの運用パフォーマンスとのズレのことです。インデックスファンドはインデックスに連動した投資成果を目指しますが、運用金額が小さいとそのズレが大きくなることがあります。
トラッキングエラーは過去の運用実績を見て評価していくことになります。
3.見えないコスト
信託報酬という残高に対してかかるコストは明示されていますが、見えないコストが発生することがあります。信託報酬以外のこのようなコストも決算時に確認してみると、より正確なコストの比較ができるようになります。
4.信託報酬の配分方法
信託報酬は通常、販売会社(銀行や証券会社)、運用会社(投信会社)、管理会社(信託銀行)の3者で配分されますが、その比率がどうなっているかは開示されています。

ファンドによっては、残高が大きくなると販売会社の報酬が大きくなる信託報酬体系になっているものもあります。このようなファンドでは販売会社に販売努力をしようとするインセンティブを与えていると言う事もできます。
しかし、例えば運用金額が2倍になっても、運用にかかる労力は2倍はかからないと思います。ところが信託報酬は2倍になる訳ですから、その一部を販売会社ではなく個人投資家にも還元すべきという考え方はありだと思います。具体的には信託報酬が残高に応じて下がっていくようなフィー体系が理想ですが、そのようなファンドはまだあまりありません。

■ 償還リスク
インデックスファンドのコスト競争は個人投資家にとって良いことですが、一方で償還リスクが高まる可能性があります。例えば、コスト競争によってファンドの収益が圧迫され運用会社の経営に影響が出れば、ファンドの運用の継続を断念する会社が出てくるかもしれません。

このように競争はしたものの、儲からないからやめてしまう(=償還)となるのが最悪の展開です。投資信託の償還は珍しいことではありません。長期投資の場合、このような償還によるファンド乗換えの手間のようなものはできるだけ避けたいものです。 

■ インデックス投資家は当面どうすれば良いのか
では既にインデックスファンドを積立している個人投資家は、これからどうすれば良いのでしょうか?コストの低いファンドに乗り換えるべきなのでしょうか?

残念ながら、どの会社のファンドが将来生き残っていくのかは現時点でははっきりせず、運用会社の取組みをしばらく静観するしかありません。低コストのファンドに乗り換えても今後さらに価格競争が続けば、また乗換えを繰り返すことになり、手間がかかってしまいます。

インデックスファンド運用会社や販売を行っているネット証券は今後は単なる価格競争を続けるだけではなく、個人投資家に対して積極的な情報配信が必要だと思います。特に運用の継続性については、長期でコツコツ投資をしようとしている投資家であればあるほど重要なポイントとなるからです。
11月2日にeMAXISの説明会が関係者向けに実施されることになっています。このような説明会やネット上での情報提供が関係者だけではなく、個人投資家に対しても行われ、コミュニケーションによって信頼感が醸成されれば、「安心」「信頼」といったコスト以外の要因でファンドを選択する個人投資家が増えると思います。

今回の話のまとめ---------

■ ファンドのコスト競争は賛成

■ コスト以外の検討事項もあわせて考えるべき

■ 金融機関の個人投資家とのコミュニケーションがこれから重要になる
では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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