「日本がリーマン・ブラザーズになる」というのは大げさな話?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

「日本がリーマン・ブラザーズになる」というのは大げさな話?

最初にお知らせです。来年の1月9日に東京のお台場で個人投資家が集まるインデックス投資ナイトがあります。前回も120名の個人投資家が集まり、今回もたくさんの方と交流できる楽しく、役に立つイベントです。詳細をご覧ください。

インデックス投資ナイトと「投信ブロガーが選ぶFund of the year2009」
http://eplus.jp/sys/T1U14P0010843P0100P002034883P0050001P006001P0030001
さて、メール、ブログ、SNS(ソーシャルネットワーク)など、ネット上のコミュニケーション手段は多様化していますが、私は最近ツイッターにはまっています。

ツイッターとは誰でも無料で簡単に登録できるネット上のサービスです。ネット井戸端会議のようなもので、場所を越えて多くの人が集まって議論や情報交換を行うことができます。1ヶ月ほど前に登録して、ブログと並行して情報交換に活用しています(意味の無いつぶやきも結構あります)。

ツイッターでつぶやいています

http://twitter.com/Shinoby7110

今週、そのツイッターで紹介されていて気になった記事が、日本の財政問題に対するイギリスのメディアの記事です。

「心配すべきは日本であり、アメリカではない」(日本語抄訳)

http://gaikokukabuhiroba.blogspot.com/2009/11/blog-post_03.html

原文もありますので、ご興味ある方は読んでみて下さい(日本語訳と比較しながら読めば、それほど難しい文章ではありませんので是非!)。

"It is Japan we should be worrying about, not America"

http://ow.ly/yNRC

■ 財務省の説明を調べてみる

財政破綻、ドル暴落、といった悲観論はセンセーショナルに危機感を煽る内容が多く鵜呑みにしてはいけません。出来る限り、自分で事実確認をしておく必要があります。例えば財務省のホームページには、少し古いデータではありますが、わかりやすい例えで国の財政についての説明がされています。

わが国財政を家計にたとえたら・・・

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014a.htm

国家財政を家計に例えると、こんな数字になるのです。
月収40万円の家庭が、33万円で生活し、田舎へ11万円仕送り(地方交付税交付金)し、ローンの元利払いが14万円で、借金が18万円。そしてローンの残高が4600万円。

通常、住宅ローンの借り入れの目安は年収の5倍と言われますから、年収500万円前後で5000万円近い借り入れをしているのと同じ日本の状態は、(財務省の説明には財政悪化バイアスがかかっていることを差し引いても)かなり危険な状態であることがわかります。

■ 金利が上昇するとどうなるのか?

日本の財政赤字を支えているのは日本国内の個人金融資産です。長期国債金利が1%台であるにも関わらず、実質金利が高いこともあって低金利が継続しています。

国債を買ったことが無い人であっても、ゆうちょ銀行や銀行に預けられた預金が国債の買い手となっているため、間接的には国債購入していることになります。年金も国債で運用していますから、日本の個人で国債に縁の無い人はいないと言っても良い状態です。

今後この国内の買い手が減って需給バランスが崩れれば、債券市場が下落し、金利が上昇するかもしれません。すると国債の利払いが更に膨らみ、財政状態がさらに悪化する懸念もあるのです。

■ 財政赤字の出口は3つ

一般に借金をしている家計が、返済地獄から脱出するには、収入を増やすか、支出を削るか、インフレになるのを待つしかありません。

財政赤字の解決も同じです。しかし、歳入を増やす増税は、税金の無駄使いに対する批判がある中困難でしょうし、財政支出の削減についても、支出が膨らんでいる中、簡単にできるとは思えません。

解決策が見えない状況で、財政赤字問題から投資リターンを得ようと動き始めている投資家もいます。リーマン・ブラザーズの破綻時に空売りで大きな利益をあげた著名投資家アイカーン氏は、ファンドを通じて大幅な金利上昇に備えるオプションを購入していると報道されています。これは債券相場の暴落という現象を見込んだ行動です。

日本がリーマン(ブラザーズ)にならないために

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091102/fnc0911021049008-n1.htm
財政赤字問題に関しては他にも懸念を示す記事をネット上で読むことができます。

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授(元IMFチーフエコノミスト)に聞く
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/

日本の財政赤字対GDP比率は先進国で最悪(The Economist)

http://www.economist.com/displaystory.cfm?story_id=14699754

■ 地震と経済危機は似ている

ブラックマンデーやサブプライム問題などマーケットの大きな変動は、地震と似ています。いつかやってくる可能性があっても、それがいつどの位の規模でやってくるのか、正確には予想できないのです。とは言え、どちらにも大切なのは、事前の準備です。

将来どのような危機がありうるのか、その可能性を考えておくこと、そしてそれに対する準備を今からしておくことです。

読者の皆さまは、どのようにお考えでしょうか?

今回の話のまとめ---------

■ 財政赤字は各国で問題になっているが日本が一番問題

■ 財政赤字問題の出口は、増税、歳出削減、インフレのいずれか

■ いつくるかわからない危機でもどんな準備が必要か今から考えておこう
では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍

株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

http://www.monexuniv.co.jp/

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