「80%はアセットアロケーションで決まる」は本当か?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

「80%はアセットアロケーションで決まる」は本当か?

このコラムの読者の方には少ないと思いますが、資産運用におけるアセットアロケーションの重要性は、これから投資を始める初心者の方には、意外に認識されていないようです。

私も動画出演しているマネックスキャンプでは、そのような長期分散投資に関する無料動画を順次公開しています。5分で学べる!を合言葉にサクサク見られますのでご活用ください。

基本から学びたい初心者の方に 毎月更新中!マネックスの投資学習サイトhttp://camp.monex.co.jp/#/school

アセットアロケーションといえば、イボットソン・アソシエイツを忘れることはできません。創業者であるイボットソン博士はイェール大学経営大学院の教授であり、過去のマーケットデータに基づく金融マーケットの研究の第一人者です。マネックス資産設計ファンドの資産配分アドバイスをしているのも同社日本法人です。

マネックス資産設計ファンド(育成型)の詳しい説明
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/fund_comment.htm?MeigCd=++0035020000

さらに最近、投資信託専用サイトも立ち上げ、個人投資家への情報提供も開始しています。

イボットソンの投信情報サイト「投信まとなび」
http://www.matonavi.jp/

来日したイボットソン博士と日本法人の小松原宰明さんによる講演会が昨日開催され、出席してきました。テーマはやっぱりアセットアロケーション。アセットアロケーションの資産運用における重要性というのがテーマでした。
(ちなみにイボットソン博士はとてもフレンドリーな方でした。アメリカの大学の先生は、明るくサービス精神旺盛な方が多いですね)

■ PAA(ポリシーアセットアロケーション)をまず知っておく
アセットアロケーションが投資においてどのくらい重要か、という議論において、まず重要なのはポリシーアセットアロケーション(PAAと呼ばれます)という概念です。これは自分が決めたアセットアロケーションの比率のことです。
例えば、ポリシーアセットアロケーションで株式50%、債券50%とすると、それぞれのインデックスを50%ずつ組み入れて運用したものが、この運用のPAAとなり、計算の基準として使われるのです。

そしてPAAと実際のファンドの運用実績を比較して効果を計測していくわけですが、何と何を比較してどのように計算するのか、というのは実はいくつかの方法があって、どれが正しいという結論が出せるものではないのです。

■ アセットアロケーションの計測は意外にややこしい
例えば、アセットアロケーションが資産運用の約8割を決定する、と良く言われますが、これは、ファンドの実際のリターンとそのファンドのPAAのリターンの相関係数をファンド毎に計算し、その平均値を求めた数字になっています。
つまり本来あるべき資産配分と実際に世の中で運用されているファンドの運用実績の違いは20%程度であるということを示しているのです。これが、80%という数字の計算方法の簡単な説明です。

もし仮に、世の中のすべてのファンドがそのファンドのPAAとまったく同じ運用をしたら、ファンドとPAAがまったく同じ動きになります。つまり相関係数は100%になりますから、アセットアロケーションで全て決まってしまうということになります。

別の計測方法もありますので説明しておきましょう。

今度は、PAAのリターンをそれぞれのファンドの平均運用実績で割ると、ファンドリターンに対するPAAの比率が計算できます。例えばPAAのリターンが8%でファンドAのリターンが10%なら0.8という具合です。

これを各ファンド毎に計算して、その数字の平均を計算してみます。すると結果はほぼ100%になります。考えてみれば当然のことで、平均すればPAAを上回るファンドと下回るファンドはほぼ同じくらいあるはずだからです。
もし同じデータを割り算しないで、それぞれファンドリターンとPAAのデータを横断的に回帰分析すると、今度は40%~70%という結果になります(分析データによってバラツキが出るという説明でした)。

ここまで読んでわかることは、計測方法で数字が随分違うということです。80%とも、100%とも、40%~70%とも言えるのです。

さらに、イボットソン博士が米国の10年間の投資信託データを使って分析した結果によれば、資産運用のリターンの67%はマーケットの変動、18%がアセットアロケーション、15%が銘柄選択、タイミング、フィーなど、という結果になっています。

たくさんの数字が出てきて混乱すると思いますし、どれが本当かわからなくなって何だか落ち着かない気分になるかもしれませんが、心配いりません。
■ 予想はできなくても、予防をすることはできる
知っておくべきことは、どの数字が正しいとか、正しくないということではなく、答えは前提条件によって変わるということです。

それぞれの計算方法をマニアックに極める必要はありません。昨日のセミナーでわかった重要なことは、アセットアロケーションを過信してはいけないが、もうやっても意味が無いという極論も正しくないというシンプルな結論です。
マーケットの変動を地震に例えて言えば、地震がやってくることがわかってもそれがいつどのくらいの規模なのかは、専門家でも予測できない。でも、地震に備えて準備をしておけば、しないより良い結果になる、ということです。マーケットの変動に対する準備がアセットアロケーションなのです。

市場変動の完全回避ができる魔法の方法ではありませんが、やらない理由は無いと言うことです。

今回の話のまとめ---------

■ アセットアロケーションが資産運用で重要であることは変わらない

■ 決定変数なのか平均値なのか、など計測方法で結果は変わる

■ アセットアロケーションを行っても市場変動の完全回避はできない

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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