2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
マネックス証券では毎週、投資信託の販売額ランキングを発表しています。個人投資家の皆さまが興味を持っている商品がリアルに反映されるので、とても面白いデータです。
投資信託ランキング一覧(週次、月次、値上がり率など・・・)
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/ranking.htm
その中に気になるファンドを発見しました。
楽天日本株トリプル・ブル
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/syohin/tousin/kihon/guest?MeigCd=++0036020000
です。このファンドは、先物取引を使ったファンドで、日々の基準価額の値動きが、日本株の値動きに対して概ね3倍程度となることを目標にする、と書かれています。つまり少ない投資金額でレバレッジを効かせた投資ができるという訳です。
日本株の下落で押し目買いをしようと考えた個人投資家の方が主な購入者と思われます。
■「トリプル・ブル」も「トリプル・ベア」も下がっているのはナゼ?
このトリプル・ブルですが、同じシリーズにトリプル・ベアもあります。こちらは、日々の基準価額の値動きが日本株の値動きに対して反対方向に概ね3倍程度となることを目標にする商品になります。つまり2つのファンドは正反対の動きをすることになります。
しかし、2つの商品の直近の基準価額を見ると、どちらも1万円を割れています。同時期に設定され、正反対の動きをするはずなのにナゼこのようなことになってしまうのでしょうか?
■1割上がって、1割下がるとどうなるか?
そこでこの投信の運用を行っている楽天投信投資顧問の営業部長である作本さんに教えていただきました。
投資信託の基準価額の値動きを考える場合、話を単純化するとわかりやすく理解できます。
例えば、日本の株価がある日10%値上がり、その翌日に10%値下がりした、とします。もし株価が10000円だとすると、10%値上がりして11000円、それが10%値下がりすると、9900円になります。
もしこのような動きに日々完全に連動するようにトリプル・ブルが動いたとすると、
<日本株>
10000円→11000円→9900円(マイナス1%)
<トリプル・ブル>
10000円→13000円→9100円(マイナス9%)
となります。ちなみにトリプル・ベアでも同じ計算をしてみると
<トリプル・ベア>
10000円→7000円→9100円(マイナス9%)
つまり基準価額が上下動するとブル、ベアどちらも日本株よりも低いリターンになってしまうということです。
逆に日本株が2日目も10%上昇すれば、次のような値動きが期待できます。
<日本株>
10000円→11000円→12100円(プラス21%)
<トリプル・ブル>
10000円→13000円→16900円(プラス69%)
この場合、トータルでは日本株の3倍を超えるリターンになるのです。上記の計算例は完全に連動したことを前提にしていますから、ファンドの実績は同じ結果になるとは限りませんが、イメージはつかめると思います。
ファンドの販売用資料を見ると確かにそのような説明がしっかり書いてありました。図表も入っていて、わかりやすく理解できます。
楽天日本株トリプル・ブル、楽天日本株トリプル・ベア販売用資料
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/U760.pdf
■ブルベア型ファンドの活用は短期で
「トリプル・ブル」も「トリプル・ベア」も両方とも設定時より下がっているのは、商品に問題がある訳ではありません。日々の動きは想定通りでも、毎日の動きが合成されると、意外な結果になることがあるということです。
1つの資産が長期間にわたって一方向に動くということは、通常あまりありません。とすれば、レバレッジを効かせたこのようなブルベア型商品は、長期保有には向かない短期投資型商品と言えます。
例えば、トリプル・ベア型は、日本株を保有している投資家が短期的に値下がりするリスクをヘッジするために活用する。あるいは、トリプル・ブル型は、株価が急落したようなタイミングで短期的なリバウンドを狙って活用する。
投資信託を人気ランキングから購入する商品を選んでいる人もいるようですが、少なくとも販売用資料を確認してどのような運用をしている商品なのかは知っておきましょう。
便利な商品も使い方によっては投資にマイナスとなってしまうのです。
今回の話のまとめ---------
■ 投信を使っている個人投資家には逆張り投資の人がかなりいるらしい
■ ブルベアは短期的な値動きを狙った投資に使うべき商品
■ 投資信託は購入前に販売用資料も必ずチェックしておこう
では、また来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/
※リスク・手数料等に関しては、『11 リスクおよび手数料等の説明 』の『楽天日本株トリプル・ベアの重要事項』ならびに『楽天日本株トリプル・ブルの重要事項』をご覧ください。
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