その418 信託財産留保金が高いファンドは、実は良心的なファンド

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その418 信託財産留保金が高いファンドは、実は良心的なファンド

<お知らせ>
【福岡で23日に開催】
松本x村上x内藤で語るこれからの投資戦略
https://seminar.monex.co.jp/public/seminar/view/1434

---

投資信託業界ではインデックスファンドが元気です。STAMインデックスシリーズとeMAXISが株式から不動産(REIT)までフルラインの品揃えでしのぎを削っていますが、そこに今月登場したのがピクテ投信投資顧問が設定・運用を行うピクテ・インデックス・ファンド・シリーズです。

マネックス証券で現在募集中なのは、中国とブラジルを投資対象とする2本のファンド。ニッチな市場を対象にするファンドなのですが、今回注目したいのは投資対象ではなく、商品の仕組みです。

ピクテの2本のインデックスファンド
https://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2010/news1005c.htm?scid=frm_top_pictet

インデックスファンドは、ファンドマネージャーが銘柄選択をする訳でもなく、指標と同じ値動きで運用すれば良い訳ですから、簡単に運用できそうに思うかもしれません。しかし、特に新興国を投資対象とするインデックスファンドは商品の仕組みによって運用成果に大きな違いが出る可能性があるのです。

その仕組みの1つが、信託財産留保金(額)です。信託財産留保金とは、投資信託の申込時または解約時に徴収される金額で、徴収された金額はファンドの信託財産に組入れられ、受益者共有の財産になるものです。

■信託財産留保金が高いファンドは良心的なファンド
ピクテのブラジルに投資するインデックスファンドを見ると、信託財産留保金が購入時に2.6%、解約時に0.6%もかかると書いてあります。購入時にかかるファンドは珍しいですが、2.6%というのは、すごい比率です。

実は信託財産留保金というのは、差し引かれるものではありますが、手数料ではありません。信託財産留保金はファンドに信託財産として入金されることになります。つまり他のファンド保有者のものになるということです。
ブラジルでは、現状、投資資金を規制するために海外からの投資資金に対して2%の金融取引税をかけています。例えば100万円のブラジル株を買うと2万円が税金として差し引かれることになります。またさらに取引にかかる売買コストもかかります。これらのコストは、ファンド保有者が負担するのではなく、その時の購入者が負担する方が筋が通っています。

そこで必要なのがこの信託財産留保金なのです。

もし、この信託財産留保金が無ければ、どうなるでしょうか?毎回新しい投資家が入ってくる度に、その投資家の金融取引税と取引にかかるコストを既に投資家になっている人が負担することになってしまいます。顔も知らない新規投資家のために既存投資家がコストを負担する。これは何だか不公平です。

このように信託財産留保金とは、投資信託の受益者(投資家)間の公平性を担保するための仕組みです。高く設定しているのは、良心的なファンドと言えます。

☆信託財産留保金についてくわしく知りたい方はこちらのレポートをどうぞhttp://www.pictet.co.jp/fund/newsletter/bnEmE/IFColumn_20100510.pdf
■投資信託でかかる為替のコストは見えにくい

またピクテ・インデックス・ファンド・シリーズは、為替の取引コストにも工夫をこらしていると言います。例えばブラジル株へ投資する場合、円からレアルへ交換が必要ですが、円→米ドル→レアルと交換するとコストアップ要因になる可能性があります。また決済タイミングに独自の方法を採用することで為替変動リスクを抑えるようにしています。

為替の取引コストというのは、表面に出てこない見えないコストと言えます。実際の運用方法を見ることができないので何とも言えませんが、ファンドによってかなり違いがあるようです。

それ以外にも、様々な工夫があります。例えば、ファンドの仕組みを見るとこんな疑問が浮かんできます。

・ナゼ、ピクテはブラジルのインデックスに10/40規定(組み入れ比率を制限する条件)を入れていないのか?

・中国H株のインデックスファンドはナゼ申込み時間が午前11時までなのか?
これらには、実はすべて理由があるのです。

マネックス証券ではピクテの商品開発担当者の方に出演してもらい、ピクテ・インデックス・ファンド・シリーズの商品の工夫について詳しく説明していただきます。是非ご覧ください。

今晩も開催します!オンラインセミナーの予定
http://lounge.monex.co.jp/seminar/

今回の話のまとめ---------

■ 信託財産留保金が高いのは悪いことではない

■ インデックスファンドの見えないコストに気をつけろ

■ インデックスファンドは今後クオリティを問われる時代がやってくる
では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧