2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
今月に入って顕在化しはじめた「ギリシアのソブリンリスク問題」。予想を超えるスピードと規模で影響が広がり始めました。欧州だけではなく、世界の金融市場にも伝染しています。何だか2年前のリーマンショックをきっかけとする金融危機のデジャ・ヴのようで、投資家心理は急速に悪化しています。
しかし、長期運用をしていると、このようなマーケットの急落に何度も遭遇することになります。重要なことはこのようなマーケットの混乱が起こる度に、慌ててその場しのぎの対応をすることではなく、日頃からこのような事態にどう対応するのか予め準備をしておくことです。
2年前に起こったことを思い出してみると、これからどうするのが良いか、何となく見えてきます。
例えば、2008年10月10日、マネックス・ユニバーシティでさわかみ投信の澤上社長と対談させていただきました。当日は日経平均は一日で900円近く下落。終値は8,276.43と最悪のマーケットでした。マーケット総悲観の中、澤上さんだけが、
「今買わなくて、いつ買うんだ!」
と一人強気でした。しかしその後、マーケットは更に下落。と思ったら、今度は、翌年3月に入り、日本株市場は底打ち、反転しました。
さわかみ投信の澤上さんが自信満々な理由(2008年10月10日)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2008/10/10.html
このような経験から言えることは、
・マーケットは下げ続けることは無く、どこかで反転する
・しかしそのタイミングをピンポイントで当てるのは難しい
という自然な結論です。だとすると、これから個人投資家は今回のユーロショックにどのように対応したら良いのでしょうか?3つにまとめてみました。
1.専門家のコメントは見通しではなく、事実を知るために使う
先行きが不安になると、誰かにすがりたくなるものです。専門家が今後の相場予想を出してくると思いますが、このようなレポートを読む時に気をつけるべきことは、事実と見通しを分けて、事実だけに目を向けることです。
プロであっても将来のマーケットの予想をするのは簡単ではありません。このような相場観をベースにこれからの動きを当てに行くのは避けるべきなのです。
今回のユーロ問題について言えば、ユーロ円がどこまで下がるか、日経平均の底値の目処は?といった予測を知ることよりも、ユーロの問題点を知り、現状を把握するためにプロの分析を活用すべきです。
2.タイミングを決め打ちして、逆張り買いしない
急激に株価が下落したりすると、リバウンド期待から逆張りの買いを入れる投資家がいます。タイミングが合えば、短期で大きな利益になりますが、どこで反転するかを当てるのは、ギャンブルです。
今回のユーロ問題について言えば、今後の不確定要因がまだ多く、安易に決め打ちをするのは危険です。
3.過剰なリスク回避はしない
ユーロの危機が続くからと言って、リスク資産をすべて引き上げてしまうとは逆に過剰反応です。リスク回避をしすぎることも、逆にリスクを取らないリスクになってしまいます。
相場の反転というのは、気がつかないうちに始まっていることが多いものです。多くの人が疑心暗鬼の中で、リバウンドが始まり、それが継続していくうちに後から相場の底に気がつくことになるからです。
もし、反転のタイミングを知ることができないとすれば、現実的な投資方法は積立になります。過去の例でも、リーマンショックの直前から積立をしたら1年後には、プラスになっていたという実例があります。
積立の威力は相場が回復してからジワっと実感できる
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2009/08/07.html
実体経済が今回の混乱によって影響を受け、今後の相場のマイナス材料になるのは、否定できませんが、経済データを見ると世界的に景気は回復傾向にあります。
2008年の金融危機が、個人投資家最大のピンチであったと同時に最大のチャンスだったように、今回の相場の下落も冷静に対応できればチャンスにできるはずです。
相場環境に関わらず、淡々と続ける。そのような投資ができるような環境を作っていくのが、結局は一番良いやり方ではないかと思います。下記のサイトの5つ目のポイントをチェックしてみてください。
投資を続けるコツ
http://www.monexuniv.co.jp/course/index.html
今回の話のまとめ---------
■ ユーロのこれからを正確に予測できる人はプロにもいない
■ 相場観と事実を分けて情報収集し、事実のみに目を向ける
■ 相場の変動に関わらず冷静に淡々と続けられる環境を作るのが一番
では、また来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
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