その425 長期投資家にとって、相場の下落は悪い話ではない

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その425 長期投資家にとって、相場の下落は悪い話ではない

何だか冴えない相場が続いて、株価を見るのもうんざりという方も多いと思います。今回はそんな方に、これからの投資を考えるためのクイズをお届けします。3分くらいで解ける簡単な問題ですので、考えてみてください。
<クイズ>

毎年1万円ずつ10年間、投資信託の積立をすることを想定します
(投資金額は10万円)。下記の3つ基準価額の値動きの中で10年後、一番投資成果が大きくなるのは、どれでしょうか?

1.10年間ずっと1万円で変わらない

2.1年目は2万円、2年目は5,000円、3年目は2万円...とジグザグに上下。 10年目は1万円に戻る

3.1年目は5,000円、2年目は2万円、3年目は5,000円...と2とは逆にジグザグ に上下。10年目は1万円に戻る

(折れ線グラフにして図にすると、比較しやすくなると思います)

どれも、10年後は基準価額1万円ですから同じですが、途中の値動きによって、結果が変わってくるのです。

■ 投資信託は実は口数が重要

投資信託の基準価額は通常、1万口あたりで表示されます。もし1万円であれば1万口で1万円ですから、1口1円ということになります。

もし基準価額が2万円になれば、1万口が2万円ですから、1万円で買えるのは5000口になります。逆に基準価額が5千円に値下がりすれば、1万円で買えるのは2万口になる訳です。まとめるとこうです。

<投資金額1万円で買える口数>

基準価額1万円のとき 1万口
基準価額2万円のとき 5,000口
基準価額5,000円のとき 2万口

毎月積立をしていくということは、この口数が増えていくということですが、自分がその投資信託を何口保有しているかを意識している人はあまりいません。しかし、この口数が実は重要なのです。なぜなら自分の資産の時価は
資産の時価 = 保有口数 × 基準価額 ÷ 10000

で計算されるからです。つまりたくさん口数を持っているか、基準価額が上昇するか、2つの掛け算によって資産額が決まるのです。

そして基準価額は毎日増減しますが、保有口数は購入した分については減ることはありません。積立をする度に口数がどんどん増えていきます。そしてそのスピードは、基準価額の低い時の方が速くなるのです。

■ 買うときには安く、売るときには高くがベスト

時価を保有口数と基準価額に"因数分解"して考えると、長期投資家にとってベストなのは、積立時は基準価額が下がり(買い付け口数が増える)、売却時には基準価額が上がる展開です。

目先の基準価額が上がると喜び、下がると落ち込む長期投資家の方がいますが、基準価額が高い方が良いのは売るときだけです。積立をしている間は基準価額はむしろ低い方が良いのです。たくさんの口数を集めることができるからです。

■ 下がってから上がった方が儲かる

では、最初のクイズの答えを考えてみましょう。

1.は、ずっと1万円で毎年1万口ですから10年で10万口。これは簡単です。
2.は、1年目は5,000口、2年目は2万口、...9年目は5,000口、10年目は1万口となりますから、合計で115,000口になります。

3.は、1年目が2万口、2年目は5,000口、...9年目は2万口、10年目は1万口となりますから、合計で130,000口になります。

投資成果が一番良いのは最初に値下がりする3ということになります。下がっている期間が長い方が、たくさんの口数が買える、ということです。

これは考えてみれば当たり前ですが、目先の動きに左右されると逆の発想になりがちです。

自分が売却する時に下がったままではダメですが、買い付けの時期は下がっていた方がたくさん買えるということを長期投資家はもっと意識すべきなのです。

これから長期で投資をしていく人にとっては基準価額の下落は決して悪い話とばかりは言えないのです。

※実は今回のこのクイズは今週、ツイッターでのやり取りをきっかけにお会いした星野泰平さんが作った問題です。星野さんは、証券会社勤務を経て、独立。現在は「じぶん年金Project」というサイトを運営しています。このサイトは、今後さらに発展させて日本人のお金を考えるサイトにする構想があるそうです。

現在のサイトにも長期の資産形成を考えたい方に役立つコンテンツがたくさん入っています。

じぶん年金Project
http://jibunnenkin.jp/

今回の話のまとめ---------

■ 資産運用は運用期間によって方法が異なる

■ 大切なのは今の相場ではなく、自分が売却する時の相場

■ 積立を続けるのなら相場の下落は悪い話ではない

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

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