その429 為替レートの予測はできない、だから外貨投資をするべき

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その429 為替レートの予測はできない、だから外貨投資をするべき

先週、今週と2回にわたり、日本通訳サービスを主宰する関谷英里子さんとマネックス・ユニバーシティが協力して「The Economist(英語版)を使った海外メディア活用術」という講座を開催しました。終了後の受講者アンケートでも高評価を頂き、手前味噌ですが充実した内容にすることができたと思っています。

丸の内で2週連続で開催された35人の英語と投資の講座
http://www.monexuniv.co.jp/service/seminar/2010/06/the_economist.html
この講座で教材に使った「The Economist」と言えば、恒例になっているのがビックマックインデックスです。これは購買力平価という考え方を応用した半分冗談のような分析です。120カ国で売られているマクドナルドのビックマックの現地価格を調査して、それが等価になるような為替レートを計算し、現実の為替レートとの割高・割安を比較するというものです(普通のハンバーガーではなく、ビックマックを使うのは、バンズ、レタス、ビーフ、ピクルス、オニオン、ゴマといった多様な材料が使われているからのようです)
記事にも書いてある通り、ビックマックはファストフードの1商品の価格に過ぎず、これだけから購買力平価を語るのには無理があります。しかし、為替の方向性について1つのヒントにはなります。特に先進国間、新興国間といった同じグループの国々の比較に使うのが良いと言えます。

ビックマックインデックス(英語ですが、国別のグラフがあります)
http://www.economist.com/node/16646178?story_id=16646178

■ユーロ圏の通貨は割高?

このデータで気がつくのは、先進国ではユーロがドルに対して引き続き割高になっているということ。そして、新興国ではブラジルレアルの割高感が目立ちます。

ユーロは、1年前のドルに対して29%割高という状態から、16%まで割高度合いが下がってきています。これはギリシャ問題に端を発する欧州の財政赤字問題が影響していますが、それでもまだこのビックマック指数では割高な状態に変わりがありません。

逆に、香港ドルや人民元はこの分析ではかなり割安という結果になっています。新興国は一般に割安になる傾向が強いのですが、その中でも割安感が目立ちます。

■購買力平価は長期の投資に役立つ考え方

為替レートの予想をするのは非常に難しいものです。特に短期的な為替変動は、金利、株価、要人発言、イベントなど無数の要因があって、購買力平価の水準から大きく乖離することも珍しくありません。

国際通貨研究所のWebには、購買力平価の長期的な推移が掲載されていますがこれを見てもわかるように、どの数値を比較するのか、どの時点から比較をするのかによって結果が変わります。

ドル、ユーロ、円の購買力平価の推移(国際通貨研究所)
http://www.iima.or.jp/research_gaibu.html

購買力平価で割安だからといって、短期取引をしてもうまくいかないことが多いのです。

■購買力平価が成立しないケースもある。

為替に関しては東京大学の伊藤元重先生の書かれたこちらの記事が、とてもわかりやすく参考になります。

外貨投資の際に考えるべきは...
http://allatanys.jp/B001/UGC020001720100520COK00551.html

このコラムにあるように為替レートは、長期的に購買力平価が成立するのであれば、各国の実質金利は均等化する傾向にある。つまり、高金利通貨へ投資しても為替で調整されるという理屈になります。

しかし、為替が難しいのは、経済成長を続けていく国に投資をすると、購買力平価が成立せず、長期的に高い収益性が得られる可能性があるということです。しかし、このような国は通貨の上昇を期待して既に高くなっている可能性もあります。

結局、為替に関しては、確実に言えることは何も無く、理屈を元に将来を予想するのは、無理があるということです。

■外貨投資はやるのがリスクではなく、やらないのがリスク

このように、為替について調べていくと、わかることが1つあります。それは、伊藤先生が指摘するように、資産をすべて円で持っていることは、私たちの将来の生活を大きなリスクにさらすことになる、ということです。つまり、外貨投資を行うことは、かえってリスクを軽減することにつながる訳です。
将来円高になるのか円安になるのか、わからないとすれば、最悪の事態は、円資産だけを持っていて円安になってしまう状態。そこに外貨投資の意味があると言えるのです。

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by:<マネックス・ユニバーシティ>メール
https://mail.monex.co.jp/php/mu_mail_reg_form.php

今回の話のまとめ---------

■ 購買力平価は短期的は為替レートを説明しないことが多い

■ 経済成長を続けていく国においては購買力平価が成立しないこともある
■ 外貨投資はやるのがリスクではなく、やらないのがリスク


では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター http://twitter.com/Shinoby7110

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