2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
投資において資産配分が重要であることは、このコラムをお読みの方には釈迦に説法のような話です。でも、実はこの配分比率、プロでも間違えてしまうことがあるのです。
今月の証券アナリストジャーナル(2010年9月号)はグローバル投資の特集ですが、「資産設計塾 外貨投資編」の制作にもご協力いただいたMSCI東京支店の松前さんが登場しています。テーマはグローバル株投資の中の年金基金の内外株式の運用比率についてです。
『証券アナリストジャーナル』9月号(目次が見られます)
http://www.saa.or.jp/journal/eachtitle/index.html
■ 日本の年金運用は日本株を偏重しすぎ
日本の年金運用では、内外の株式比率を約60:40で運用してきました。ところが、時価総額で見た日本株と外国株(先進国と新興国の合計)の比率は9:91程度。現状の運用比率は時価総額に比べ日本株に50%以上オーバーウエイトしていることになります。その結果、年金資産の株式運用は、計算上過去15年で80%を超えるマイナスのリターンになってしまいました。
このように日本株に偏重した運用が行われてきた原因は2つあります。1つは年金資産の運用規制によって資産配分が制限されてきたことの名残り、そしてもう1つがホームバイアスの影響です。
ホームバイアスとは自国の通貨に資産配分が大きくなってしまう傾向のことを指します。
■ 相関係数の上昇による分散効果の低下
日本株に関してはもう1つ別の問題も指摘されています。それは、外貨建て資産との相関係数の上昇です。
ニッセイ基礎研究所の調査レポートには各資産間の相関係数の推移がグラフ化されていますが(下記リンク先の表1)、これを見ると日本株の外国株、外国債券との相関係数が、ここ数年高まっていることがわかります。
日本株の組み入れでは分散効果が期待できない?
http://nli-research.co.jp/report/pension_strategy/2010/Vol171/str1009d.pdf
このような傾向が続くのであれば、日本株に資産を配分しても分散効果があまりなく、組み入れ比率を高める理由はさらになくなってしまいます。
■ 日本株と外国株は一体運用するのが合理的か?
日本株の低パフォーマンスとホームバイアスの解消を目的に年金基金の中には日本株と外国株を一体で運用する動きも出てきているようです。通常年金運用でも、日本株にはTOPIX、外国株にはMSCIコクサイといったインデックスを使いますが、内外を一体化したインデックスであるMSCIワールドインデックスを採用するような方法です。
これは年金基金であれば、検討可能な方法だと思いますが、個人投資家の方には、おススメできません。なぜなら為替リスクの管理が逆に煩雑になるからです。
同じ株式であっても日本株と外国株では為替リスクの有無という違いがあります。為替リスクを管理するためには2つの資産は別にしてそれぞれの比率を管理した方が合理的です。また日本株、先進国株、新興国株の比率も自由に設定することができます。
■ もう日本株はあきらめた方が良いのだろうか?
日本株に対してはネガティブな見方をする投資家が増えていますが、分散投資で考えるべきことは、日本株に投資するか、しないかという単純な話ではなく、資産全体に占める日本株の比率をどの位にするかという話です。
日本株をあきらめるという極端な結論ではなく、資産配分の観点から、全体に占める日本株への投資比率を見直してみるのが良いと思います。
今回の話のまとめ---------
■ 日本の年金運用は、2つの理由で日本株式偏重になっている
■ プロがやっている株式の内外一体運用は、個人投資家には向かない
■ 株式全体の中で日本株に配分する比率を再考してみよう
では、また来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110
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