その440 金の価格はどこまで上がるのか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その440 金の価格はどこまで上がるのか?

金(ゴールド)の価格が上昇しています。今週に入ってからも最高値を更新し続けています。マネックス証券のチーフ・エコノミストの村上は現状を「金のバブル」と分析しています。一方で、これからもまだ上がるのではないかという専門家の意見もあります。

マネー偏在、その後を見据えた投資先とは(月刊マーケットの歩き方) http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2010/news1010j.htm
■ 逃避資産としての金

金にはコモディティとしての側面もありますから、原油、穀物などの商品市況の上昇に連動する傾向があります。ただし最近の上昇は明らかに他のコモディティとは乖離した動きになってきており、金独自の要因がありそうです。
2008年の金融危機以降、金の需要が高まったのは逃避資産としての側面があったからです。リスクを回避したい投資家が、株や不動産を売却し、債券や金を買うという動きに出たのです。

当時とは経済状況は随分変わっていますが、先進国の景気回復が進まない中、未だにマーケットに残っている過剰なリスクへの警戒感が、投資資金を金に向かわせていると考えることもできます。

■ 貨幣の価値が落ちると資産は金に向かう

しかし、金には逃避資産としての側面だけではなく、インフレをヘッジする資産という側面もあります。インフレとは貨幣の価値が下がり、実物資産の価値が上がることです。現状は、世界的に見てもインフレと言える状況にはありませんが、将来のインフレを見越して金が買われているという見方もありえます。

先進国においては、米国、日本などのように一段と踏み込んだ金融緩和策、例えば量的緩和を進めようとしています。金融政策の効果には懐疑的な見方もありますが、将来のインフレ期待が高まる可能性はあります。

また、現在の金の価格の上昇は、ドルと金の交換価値が変わっているから、と見ることもできます。つまり金の上昇ではなく、ドルの下落という見方です。確かにドルは、金だけではなく、ユーロや円などの他の通貨に対しても下落しています。金も通貨の1つと考えれば、ドル安が金価格上昇の一因とも言えるのです。

■ 代替物が無いのが金の強みではあるが...

貴金属と言えば、金以外にもプラチナや銀といったものがあります。しかし、貴金属としての信頼感や流動性を考えると金には劣ります。「モノ」でありながら「おカネ」としても普遍的な価値を持っており、中央銀行も支払い準備金として大量の金を保有しています。

かつて、「金本位制度」のもとで、金の保有量に合わせて通貨を発行していたという歴史もあり、その制度がなくなった現在でも、金は特別なポジションにある貴金属なのです。つまり、金には完全な代替物が存在しません。
最近の金の価格の上昇要因としては、上記以外にも様々なことが考えられ、今後も上昇が続くかどうかはわかりません。しかし、リスク回避だけで金が買われていると考えるのには無理があるように見えます。

マーケットで上昇しているのは、金だけではありません。金利低下によって債券価格も上昇、そして株式市場も世界的には堅調です。このような株式、債券、金のトリプル高というのは、マーケットでは珍しい現象で、この状態が永遠に続くことはないでしょう。

例えば、「The Economist」誌の記事によれば、1980年からトリプル高になった時期というのは、4回しかなく、そのいずれもがその後の債券価格の下落(金利上昇)につながった、という分析が紹介されています。

「The Economist」後半部分をお読みください(英語です)
http://www.economist.com/node/17202341

金の上昇だけに注目するのではなく、株式、債券、不動産など様々な資産の動きを多面的に捉え、その次に何が起きるかを考えておく時期が近づいていると思います。

今回の話のまとめ---------

■ 金価格の上昇は行き過ぎ、まだ上がる、と2つの対立する見方がある

■ 金が他のコモディティと異なるのは稀少性と歴史的経緯からの流動性
■ 金、株、債券のトリプル高はいつまでも続かないだろう

では、良い休日を・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110

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