その442 原油先物市場で起こっている「コンタンゴ」って何?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その442 原油先物市場で起こっている「コンタンゴ」って何?

堅調な価格の推移もあってか、最近コモディティに対する関心が高まっています。実は株式や債券と異なり、コモディティには配当や金利がありません。価格が需給で決定し、その値上がりだけからリターンを得ようとする意味では、投資対象として独自の資産と言えます。また、市場規模は他の資産に比べ小さく、投機資金の流入によって大きく価格変動する可能性もあります。
コモディティに投資をしたい場合、その方法はいくつかありますが、代表的な方法はコモディティファンドを使うというものです。コモディティファンドは、
先物市場に投資して運用しているケースが多いのですが、ここ数年、
この先物市場で変わった現象が起こっています。

■ 先物市場を使ってどんな運用をしているのか?

その前に、まず先物市場について、簡単に説明しておきましょう。先物とは、コモディティだけではなく、株式や債券など幅広い商品に存在しています。
個人投資家も活用できる日本株の先物取引
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G1950/fop/index.htm

先物という名の通り、将来の特定の時点での取引について、現時点で取り決める商品です。

実際には、それぞれの先物市場が、上場している商品に関しての取引期日を決め、その日までに取引の決済をするようになります。

その期日は、限月と呼ばれ、1つの商品に対して、複数の限月が存在します。例えば、10月限であれば10月末までに、11月限は11月末までに決済、というように取引期日が決まっており、時間の経過と共に、手前の限月は終了し、新しい限月が作られていきます。

この先物市場を使えば、将来の売却価格を確定させたい人は先物の売りを使って固定できます。このように将来の価格変動を避けるヘッジの手段として有用なものです。逆に、先物の買い手は現物資産を購入しなくても運用することができるのです。

■ 先物を使ったコモディティファンドの運用方法

先物市場を使って運用を行っているコモディティファンドは、取引の中心となっている限月の先物を購入して運用を行いますが、いずれ期日が到来します。すると、現在投資している限月の先物を売却して、次の限月の先物を買って運用を続けていきます。この限月の乗り換えをロールオーバーといいます。

例えば、現在10月限で運用しているとすると、それを全額売却し、今度は次の期近である11月を購入、というように取引します。定期的にこのような取引を繰り返していくのです。

■ 原油先物で見られるようになった「コンタンゴ」とは?

このロールオーバーの時に問題になるのが、売るときの値段と、次の限月を買うときの値段の差です。この時に次の限月の方が高く、ロールオーバーで損失が発生する状態を「コンタンゴ(Contango)」と言います。コンタンゴ状態で先物を運用していると、ロールオーバーの度に損失が累積し、リターンにマイナスの影響が出てくるのです。

原油の先物市場では、先の限月の方が安くなっていることが多く、コンタンゴが発生することは、珍しかったのですが、2005年頃からこのコンタンゴが見られるようになりました。

■ コンタンゴは投資資金自身も一因?

原油市場におけるコンタンゴの原因は諸説あります。例えば、電力売買の自由化によって、独立系電力会社などが長期契約の電力料金の燃料代を固定するために先物の買いポジションを長期で買ったという説。あるいは、年金基金や投資信託の資金が流入し、ロールオーバーを行うことが原因という説。
実際は複合的な要因によると思われますが、コモディティ市場のマーケット規模はグローバルな投資資金に比べ小さいため、このような今までとは異なった性質の資金が入ってくるだけで、市場構造が変わってしまう可能性があるのです。

コモディティへの投資は、このように一筋縄ではいきませんが、コモディティへの投資の方法はファンドだけではありません。石油株や鉱山株のような資源株に投資をしたり、オーストラリアのような資源国に投資をする、という間接的な方法も考えられます。どちらも、完全なコモディティ投資とは言えませんが、ファンドを使った投資の代替として、検討できると思います。
今回の話のまとめ---------

■ コモディティファンドは先物を使って運用するのが一般的

■ 原油先物で発生する「コンタンゴ」は運用にマイナスの影響

■ コモディティへの投資方法はファンド以外にも検討可能


では、良い休日を・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110

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