2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
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金が史上最高値を更新し、小麦やとうもろこしといった穀物も急騰する商品が増えてきて、個人投資家の方のコモディティに関する関心は高まっているように見えます。最近このコラムでコモディティを取り上げることが多くなりました。
金の価格はどこまで上がるのか?(バックナンバー)
http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2010/10/15.html
原油先物市場で起こっている「コンタンゴ」って何?(バックナンバー)http://lounge.monex.co.jp/column/shisan/2010/10/29.html
■ コモディティには配当や分配金が無い
株式や債券、不動産といった資産は、分散投資に組み入れる資産として認識されていますが、コモディティについては組み入れる必要は無いという意見もあります。
コモディティには株式の分配金や債券の金利のようなインカム収入も
基本的にはありません。コモディティで収益を上げるためには、安く買って高く売ることによるキャピタルゲインを狙うしかないということです。
■ コモディティは理論的な価格が計算できない
また、株式であれば、将来の収益から理論株価を算出できますし、債券であれば市場金利と信用力によって債券価格を計算することができます。ところが、コモディティには、このような理論的な価格計算方法がありません。生産コスト、採掘コストのようなコストはあっても、取引価格は需要と供給によって大きく乖離します。
例えば穀物であれば、天候や消費需要によって価格が変動します。しかし、価格が上昇すれば、増産する生産者が増え、供給を増やすことになります。鉄鉱石や原油のようなコモディティも価格が上がれば、採掘コストの高い鉱山や油田で生産する企業が出てきますから価格上昇は供給を増やし、上昇を抑える可能性があるのです。
エネルギー関係のコモディティの場合、景気後退や暖冬などでエネルギー需要が減退すると、価格は下落ということになります。
このように、コモディティを長期で保有していても果たして株式や債券のようにリターンが得られるかどうかについては疑問だというのが、コモディティ投資に否定的な人の考え方です。
しかし、コモディティの中には需給関係が悪化しにくい商品も存在します。
■ 供給が増えないコモディティ
例えばビンテージワインです。ワイン全体の生産は需給によって変わりますが、生産年の決まった高級ワイン(ビンテージワイン)は、その年に生産されたもの以外、将来的に生産量が増えることはありません。むしろ供給は減っていくのです。
例えば、2000年のビンテージの特定の銘柄ワインが10万本作られたとすると、10万本が当初の供給量ということになります。しかし、その後ワインは消費されて10万本から減っていきます。また破損してしまったり、保存状態の悪いものがあったり、供給量は、9万本、8万本・・・と減っていきます。
需要に関しても、先進国だけではなく、新興国の富裕層もワインを飲む人が増えてきており、将来ワインに代わる魅力的な飲み物が出現しなければ、需要は堅調だと思われます。景気後退期には需要が一時的に低下することもありますが、今までの動きを見るとそれも時間と共に元に戻っています。
ニセモノなどがあれば別ですが、クオリティの高い高級ワインは流通ルートもしっかり把握されていて需給は時間と共にタイトになっていく可能性が高いのです。
このような高級ビンテージワインに投資をする方法としては、例えばワインファンドを使うという方法があります。日本国内では、ヴァンネットという会社が、2002年からファンドの取扱いを開始し、既に数十億円の運用実績になっています。
こちらはファンドと言っても投資信託ではなく、匿名組合契約という方式です。また、現在募集されているファンドの場合、投資最低金額が100万円となっており、ある程度まとまった資産をお持ちの方が検討すべき商品です。商品の仕組みやリスクについて充分に検討されることをおススメします。(本商品は、マネックス証券での取扱商品ではありません)
さらにフランスのワインの場合、取引通貨はユーロになります。したがってユーロの為替リスクがある点も注意が必要です。
ビンテージワイン以外にも、絵画のような美術品も作家が作品を作らなくなれば、供給はもう増えません。人気の作家の絵画作品が、オークションで高値で取引されたというニュースは最近良く耳にします。
そこまで高額の美術品でなくても、将来性のある作家の作品を青田買いのように購入して、作品を鑑賞して楽しみながら、将来の値上がりを待つという人も現れているそうです。保管リスクがありますが、趣味と実益を兼ねた投資ということができます。
■ コモディティ投資はリスクに対する正しい認識を
ビンテージワインや美術品は、純粋なコモディティとは言えないかもしれません(オルタナティブ投資に分類する考え方もあります)が、供給が増えないというのは他のコモディティには無い特徴です。
いずれにしてもコモディティは、株式や債券といった伝統的な投資対象とは異なる特性や値動きをします。組み合わせることで資産全体の効率性を向上させることも期待できますが、他の商品には無いリスクや特性について理解した上で活用するようにしましょう。
今回の話のまとめ---------
■ コモディティを分散投資に組み入れるかどうかについては議論がある
■ コモディティは需給によって変動する価格から利益を狙う商品
■ 供給が増えないコモディティも世の中には存在する
では、良い休日を・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110
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