2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
イギリスのキャメロン首相が、国民の生活満足度を図る「幸福度指数」を導入するというニュースがありました。現状の経済データだけでは、国民の全般的な生活満足度を知ることができないので、国立統計局(ONS)が、来年4月から生活の質(QOL)を測定するようです。先進国が国家レベルで、満足度という主観的な尺度に注目し始めたというのは、時代の変化を感じさせる大きな出来事だと思います。
日本でも、金融広報中央委員会(愛称:知るぽると)のアンケートで、経済的豊かさと心の豊かさについてのアンケート項目があります(下記PDFファイルの問34)。
家計の金融行動に関する世論調査(平成22年、PDFファイル)
http://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/yoron2010fut/pdf/shukeif1.pdf
これを見ると、心の豊かさには「健康」や「家族との絆」が重要という回答が多くなっていますが、同じくらい経済的豊かさも重要だという回答もあり、お金が心の豊かさにも重要な役割を果たしているという現実が見えてきます。
お金があっても幸せになれるかはわかりませんが、お金が無いことは心の豊かさに大きく影響する。と言っても、収入を増やすのは簡単ではありませんし、投資をしても、資産が殖えるかどうかは確実ではありません。
そこで考えるべきことは、同じお金でより大きな精神的豊かさを得られるように工夫をすることです。同じ1万円でも、有意義に使えるようになれば、ムダに使ってしまう人より、同じお金で大きな心の豊かさを手に入れられるからです。
そのためにはどうしたら良いのでしょうか。
■ お金を殖やすより、幸福になるのはどうするかを考える
先週、さわかみ投信の澤上篤人社長と講演会でご一緒したのですが、澤上さんが人生を豊かにするためにやっていることは「捨てる」ということでした。
現代ビジネス トークライブ「『実現力』を手に入れる!」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1297
(開催は終了しました。近日中に現代ビジネスのサイトにレポートが公開される予定です)
何でもかんでも欲張ってやろうとするのではなく、自分のやることに優先順位をつけて、自分が本当に好きでやりたいもの、欲しいと思っていることを突き詰めて考えてみる。そして、それだけに集中する。それが澤上さんのやり方です。
澤上さんは、以前の会社では、自分がつまらないと思う親睦会のような集まりには一切顔を出さず、評判はとても悪かったそうですが、「言いたい人には言わしておけば良い」とまったく気にしないそうです。
「捨てる」のには勇気が必要です。しかし、捨てられないからこそ、全てが中途半端になってしまうのです。大掃除をして大量のゴミを出した後のように、捨てた後はすっきりとして、さわやかな気分になれば、心の豊かさが手に入ります。
■ 横並びをやめると心が豊かになる
私は、横並びをやめれば、心が豊かになると思っています。人と同じことをする、人と違うことをしたがらない、それをやめてしまうのです。
人と同じことをして、隣の人と比較をするから、嫉妬したり、優越感に浸ったりして、心が貧しくなっていくのです。比較しないということは、自分の価値観で判断するということ。世間一般の評価ではなく、自分が好きか嫌いか、良いと思うか悪いと思うか、で判断すれば、本当にやりたいこと欲しいものだけと付き合うようになります。
横並びをやめれば、自分と同じことをする人が周りから減っていきますから、やりたいこともやりやすくなります。
■ あえて自己中心的になってみる
また、人のことを考えすぎないことも必要だと思います。日本にいて思うことは、周囲の目線を気にしすぎる人が本当に多いということです。気配りをするのは良いことですが、気配りしすぎて疲れてしまう必要はありません。
人に迷惑をかけない範囲で、自分のやりたいことをやる。例えば、2次会に無理をして付き合う、行きたくないイベントに嫌々参加する・・・思い切ってやめてしまうことです。
自分を必要以上に殺して、無理をするのは心を貧しくしていく原因だと思います。
■ 使うお金にはどんどんレバレッジをかける
捨てる、横並びをやめる、自己中心的になる、といったことを実践できれば、同じお金を使って、幸福度を高めることができるようになります。
例えば、みんなと同じブランド品を買って、込んでいるゴールデンウィークに観光地に行って、クリスマスにプレゼントを買って・・・という本当に豊かなのかよくわからない生活から脱出できるからです。
人と違う価値観で自分のやりたいことができればコストもかかりません。例えば、マイホーム、高級車、高額のレストラン・・・本当に欲しいのかどうかを自分に冷静に問いかけてみるのです。
本当に好きならば、手に入れる方法を考えるべきですが、もしかしたら、マイホームより賃貸住宅で好きな場所に住む、車をやめて自転車で健康に生活する、レストランより家でのんびり食事をする。その方が自分は好きなのかもしれません。
同じお金でより大きな心の豊かさを得る方法はたくさんあります。
収入を増やす、支出を減らす、投資で殖やす、が将来のお金を増やすための3つの方法ですが、もう1つ、同じお金で何倍心を豊かにできるかを考えてみるのです。
もし、1万円で得られる心の豊かさを1000円で得られるようになれば、お金の価値は、10倍になります。使うお金にレバレッジをかけるとはそういうことです。
今回の話のまとめ---------
■ 資産が多くても不幸な人は多い
■ 同じ1万円でどれだけ幸福になれるかがレバレッジ
■ 自分の価値観にしたがって行動すればレバレッジが高まる
では、良い週末を・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110
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