2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
この度の震災で被害に遭われた方には、心からお見舞いを申し上げます。東京にいる自分には、寄付、献血、そして祈ることだと思い、毎日を今までと変わることなく生活することを心がけています。
世の中には、多くの人が予想さえしかなった大きな変化が起こります。金融市場では、2008年のリーマンショックを記憶している人も多いと思いますが、金融市場の大変動や、災害によって、将来に対する不安は高まります。
確かに、3月11日を境に、日本社会は大きく変化してしまったように見えます。東京でも、計画停電やガソリンなどの物資の不足もあり、余震も続いていることから、遠出をしたり、夜遅くまで繁華街に繰り出す人も減り、自宅で静かに過ごす人が増えました。
これから日本人の価値観が大きく変わる、と言う人もいます。確かにライフスタイルは変わっていくのかもしれませんが、お金との付き合い方に関しては、これまでもこれからも変える必要はないと思います。
むしろ、相場の大きな変動があったとしても、冷静にその変化に対応できるよう日頃から準備を行い、淡々と行動できるようにする。そして、長期的な視点で続けていくことが大切なのです。
■ 絶対に安全なものはない
震災で改めて感じたことは、「世の中には絶対はない」ということでした。すべてのものには、リスクがあります。投資で言えば、安全資産といわれる円の預金でも、金(ゴールド)にもリスクはあります。
リスクから資産を守るには、安全な資産の保管場所を探すのではなく、資産を分散するしか方法はありません。例えば、資産が円に偏っている人には、円高なら問題はありませんが、極端な円安リスクを取っていることになります。円の預金は絶対安全と考えるのではなく、資産の分散を検討すべきでしょう。
■ 最悪のケースを想定する
そして、もう1つ大切だと思ったことは「最悪を想定する」ということです。確かに、最悪を想定をしていても、それを超える事態が発生することもあります。例えば、2008年のリーマンショックの時もそうでした。しかし、もしそうだとしても、何も準備をしていないのと、過去のデータに照らし合わせ、最悪を想定しておくのでは、急変時の対応能力が違います。
投資をしていると、最高の結果だけを想定してしまい、リスクの取りすぎに陥るケースが多くなりがちです。
「賢人はつねに最善を望みながら、最悪を覚悟する」という諺があります。個人投資家が、常に意識すべき考え方です。
■ ピンチはチャンスに変えられる
楽観的なことを言うつもりはありませんが、人生で遭遇する多くのピンチは、その後の対応によってチャンスに変えられる可能性があります。今回の震災では、地震や津波、そして原発による大きな被害が発生しました。しかし一方で日本人の危機状況における驚くべき冷静さ、そして助け合う連帯の気持ち、そして将来の復興に向けての強い思いを感じることができました。また、世界各国からの迅速で想定をはるかに超える励ましのメッセージと物理的サポートも受けることができました。
今、多くの日本人は今回の困難を乗り越えて、日本経済を復興させようという強い気持ちを持っていると思います。1990年のバブル崩壊以降、停滞してきた日本経済を復活させようという意思を感じます。災害はあってはならないことですが、困難の中に見える希望もあるのです。
個人投資家の皆さまには、環境の変化に振り回されない、自分のお金との付き合い方をもう一度見直し、それを続けられる仕組みを作ることを提案したいと思います。今までは実行できていなかった人も多いと思うからです。
繰り返しになりますが、「世の中が変わったとしても、お金との付き合い方の基本は、今までもこれからも変わらない」。これが私の今考えていることです。
今回の話のまとめ---------
■ 資産をリスクから守るには分散しかない
■ 最悪のケースを考えることで、急落時に冷静な対応ができる
■ 世の中が変わってもお金との付き合い方は変わらない
では、また来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)
内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター: http://twitter.com/Shinoby7110
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