その464 長期的な3つの「日本リスク」を認識する

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その464 長期的な3つの「日本リスク」を認識する

日本の復興のため、東北地方で被災された方へ何かできないか色々考えています。寄付金や義援金だけではなく、チャリティイベントを7月に開催する計画を立てたり、東北の被災した酒蔵のお酒を飲む会を企画したり、微力ですが、復興のお役に少しでも立ちたいという気持ちです。

その一方で、震災を通じて、人生戦略の重要性を再認識しました。具体的に言えば、これから考えなければいけないことは、「日本リスク」をどうやってマネージするかということです。なぜなら、日本人の多くは人生全体が、日本にどっぷりと浸かっているケースが多いからです。

■ 金融資産の「日本リスク」個人金融資産が日本円に偏っているのは良く指摘されることです。資産運用の基本は分散です。株式、債券といった資産の種類を分散させることも必要ですが、もう1つ忘れてはならないのが、通貨の分散です。輸入品に関する将来の外貨での支払いのために円以外の通貨を保有することが重要なのです。

自分の資産全体で考えてみると、円高になるということは自分の円資産部分の価値が相対的に高くなる、ということです。外貨を保有していればその部分は円高でマイナスの影響を受けますが、資産全体の価値は増えることになります。外貨投資をしないですべての資産を円で持っていれば、外貨投資をする場合より資産の価値は高まります。しかし、その場合は円安リスクを抱えることになります。

外貨投資は円安になった時に資産価値の下落を防止する保険と考えることができます。だから外貨は保有しない方がリスクだとも言えるのです。

こんな人は資産の見直しが必要では?http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2011/news11046.htm

そんな「日本リスク」は、金融資産以外にもあります。

■ 仕事の「日本リスク」私も含め、大半の日本人は仕事の「日本リスク」も抱えています。日本語で日本人を相手に日本を拠点に仕事をしているからです。

「人的資本」という考え方があります。金融資産だけではなく、自分自身も金融価値を生み出すものとして捉える考え方です。例えば、毎月会社から円で給料をもらうビジネスパーソンは、自分自身が定期的に収入を稼ぐ円の債券のようなものです。

この人的資本においても、金融資産同様に日本に偏っているのはリスクと捉えられます。仕事をしている企業が、グローバル化をしていく必要もありますが、自分自身の仕事のフィールドもグローバル化しなければ「日本リスク」を背負い込むことになります。

■ 教育の「日本リスク」さらに、これからの若い世代が考えなければいけないのは教育の「日本リスク」です。

日本の教育は、与えられた条件で正しい解答を短い時間で見つける訓練に重点が置かれ、答えが無い困難な問題にチャレンジする訓練はあまり重視されません。前例の無い状況への対応が苦手です。

また、自分と異なる価値観を持つ人と議論して相手との理解を深めるといったコミュニケーション能力も養われません。学校のクラスメイトはほとんど日本人。協調性が重視され、価値観の多様性に触れる機会が無いからです。そして言語も日本語です。

このような日本人の間の閉じた世界で暗記中心の受験勉強の競争をしても、世界的にその価値が通用するのか疑問を感じます。日本の常識は世界の非常識になっている可能性があるのです。

東大を蹴ってイエールのような海外の大学に進学するスーパー高校生が話題になりましたが、そのうちにアメリカだけではなく、北京大学やシンガポール大学に行く日本人が当たり前になるかもしれません。

東大ブランドは世界には通用しない - 灘高トップはエール大学を選んだ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110111/217870/?P=1&rt=nocnt

日本の富裕層の中には、家族でシンガポールに移住している人もいます。子供の教育環境を考えての決断のようです。移住と聞くと極端な例だと思うかもしれませんが、10年後には当たり前のことになっているかもしれません。

確かに、日本は住みやすく居心地の良い場所です。しかし、その中でのライフスタイルは、強烈な日本リスクに晒されていることをもう少し意識する時期に来ていると思います。自分のライフスタイルがどれだけ1つの国に依存しているのかを見つめ直し、これからを考えるべきです。

今回の話のまとめ---------

■ 自分の様々な「アセット」が日本に偏りすぎていないか見直してみる
■ 金融資産であれば、自由に海外に移転することができる

■ 教育は若い世代にとって最大の「日本リスク」

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長ツイッター: http://twitter.com/Shinoby7110

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