その469 株ロボファンドの好成績は実力?それともまぐれ?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その469 株ロボファンドの好成績は実力?それともまぐれ?

「日本株ロボット運用投信(愛称:カブロボファンド)」の運用成績が好調です。国内株アクティブ型投信384本中、過去1年騰落率ランキング(2011年4月末基準)で何と第1位。運用成績はプラス6.4%でした。

国内株アクティブ型投信過去1ヶ月騰落率(4月)で首位!
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G600/new2011/news1105p.htm
ロボットが運用するというこの投資信託。当初、冷ややかな目でみる人もいたのですが、ファンドマネージャー(人間)の運用を上回る実績を出し始めにわかに注目されるようになってきました。(メディアからの取材も増えています)

■ チェスならロボットが人間より強くなれる理由
ロボット対人間というと、有名なのがチェスです。1997年にスーパーコンピューター「ディープブルー」が、チェスの世界チャンピョンに2勝1敗3引き分けで勝利し、コンピュータが世界チャンピョンより強いと話題になりました。

コンピューターは、高速の演算能力を駆使して、あらゆる過去のパターンを分析して、次の最適手を探し出すアプローチで分析します。チェスのように複雑ではあっても未来の展開が有限である世界では、人間に比べより多くのパターンを短時間に分析できるコンピューターの方が人間より有利だというのは、何となく理解できます。

では投資の世界は、どうでしょうか?

■ ロボットにはブレない強みと、柔軟性の無い弱みがある

ロボットの強みは、思考パターンがブレないところにあると思います。ロジックが決まっているので、今までのやり方を急に変えたりすることはありません。マーケット環境が変わらなければ、過去実績を上げたロボットがこれからも実績を上げる可能性が高いと考えることができるのです。

ファンドマネージャー(人間)の場合は、そうはいきません。感情的なブレによって投資判断が変わっていく可能性があります。

一方でロボットには、相場環境の変化を取り入れて運用を微調整する、といった器用さはありません。

また数値化できない情報を投資判断に取り入れることは苦手です。例えば、製造業の工場見学をしてその会社に対しての投資価値を判断する、という能力はロボットにはありません。あるいは、社長の説明を聞いて、プレゼンテーションの魅力から投資判断を行うといったこともロボットにはできません。

ロボットの場合は限定的な材料を徹底的に分析し尽し、その中で将来を予測することによって投資判断をすることしかできないのです。

■ ファンドマネージャーが陥りがちな銘柄選択のワナ

人間が運用するアクティブファンドの場合、純粋な投資判断ではなく、別のファクターが影響することもあります。

例えば、ファンドマネージャーは他のファンドやベンチマークとなるインデックスとの競争をしています。リターンをあげることがファンド運用の本来の目的ですが、気がつかないうちに競合やベンチマークに負けないことが目的になってしまう危険性があるのです。

日本株で言えば、インデックスにおける時価総額比率の高い銘柄(メガバンクやトヨタ自動車、NTT、NTTドコモといった銘柄)は、投資先に組み入れないで、値上がりしてしまうと、インデックスに大きな差がついてしまいます。これらの銘柄をある程度組み入れることで、「買わないリスク」を避けようとしてしまうことがあるのです。

カブロボファンドの組み入れ銘柄を他のアクティブファンドと比べてみるとかなり変わった銘柄が組み入れられていることがわかります。収益機会のあるタイミングを見つけて機動的に売買するという他のファンドとは違った投資手法であるからかもしれませんが、人間が発見しきれないような収益機会を見つけ出していることを示しているのかもしれません。

■ ロボットと人間にアクティブ運用を分散させる手も

日本株のアクティブファンドで運用しようとするならば、その中の一部はロボットに運用させても良いかもしれません。全部の資金を人間にやらせるよりも、一部をロボットに「分散」させた方が人間が犯しがちなリスクを排除できるからです。

ロボットと人間にはそれぞれに強み弱みがあります。株式運用の世界で長期的に資産を殖やすのに向いているのはどちらなのかはまだわかりません。しかし、ロボットには運用の一貫性が保たれる安心感があるのも事実です。

今後も人間を打ち負かし続けるようなことがあれば、ファンドマネージャーは、人間(ライバル)とインデックスだけではなく、ロボットもライバルとして意識せざるを得ないでしょう。1年後が楽しみです。

日本株ロボット運用投信
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/syohin/tousin/kihon/guest?MeigCd=++0035960000

今回の話のまとめ---------

■ 過去のパターンを分析し、最善策を考えるのはロボットが得意

■ 人間にはロボットにはできない柔軟性があるが、感情面の弱さもある
■ 人間運用とロボット運用でアクティブ運用を分けてみるのも手

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

ツイッター:http://twitter.com/Shinoby7110

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