その471 個人投資家は金融機関に何を求めているのか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その471 個人投資家は金融機関に何を求めているのか?

個人投資家が、何を基準に金融機関を選ぶのか?家電製品と比較してみるとそこには似ている点と違っている点があることに気がつきます。

■ 家電製品と金融商品の共通点と違い

ネット証券を使っているような人なら、家電製品を購入するとき、商品比較サイトで最安値を確認して、家電量販店の実質価格と比較して、最終的にどこで買うかを決めることが多いと思います。

家電製品では、どこで買うかより、どこの製品なのか、が重視されます。例えばソニーの商品を買うと決めれば、ネットでも家電量販店でも関係ありません。

金融商品も本来はこれと同じような判断基準になるべきです。株式であれば、どの証券会社で購入しても同じ株が買えます。投資信託も販売会社ではなく運用会社で選ぶのが本来あるべき姿です。

ところが、投資信託をどの銀行で買ったかは覚えている人は多くても、どの会社が運用しているのかを確認している人は少ないものです。

家電製品と金融商品では買い手の商品選択プロセスがまったく異なっているのはナゼでしょうか?

■ 販売会社は家電量販店ではなく、お医者さん?

家電製品と金融商品には大きな違いがあります。それは、金融商品は、本当に良い商品なのかを個人が判断しにくいということです。また、その人に適した商品は年齢や資産状況によっても異なります。だから専門的なアドバイスが必要になります。家電製品のようにカタログを読んだだけでは、よくわからない人が多い。そこに、金融商品の販売会社の存在価値があると思います。

個別の商品のリスクや商品特性を説明するだけではなく、資産運用全体に関してのコンサルティングを行う。いわば「お金のお医者さん」のような役割が期待されているのです。

■ コストだけの競争はもう限界

私は、これまで低コストこそが、ネット証券に提供できる最大の付加価値だと思ってきました。確かに、ネット証券によって日本の個人投資家の投資環境は大きく改善しました。

株式売買手数料は完全自由化で10分の1以下に下がり、インデックスファンドはノーロードが当たり前、しかも0.5%前後の低信託報酬です。FXの為替手数料はゼロ円が当たり前です。ただ、これ以上のコストの低下はもう限界です。

■ 個人投資家が求めているのは低コストだけではない?

日本では、比較的手数料が高いと言われている銀行で投資信託が売れています。その理由としては、個人投資家のリテラシーが低いから、というのが今までの金融業界での定説でした。しかし本当にそうなのでしょうか?

私は、個人投資家の中には、コスト以外の要因で金融機関を選択する人も実は一定程度いるのではないかと思いはじめました。

資産運用とは自分の人生を左右するとても大切なものです。例えば医者に手術をお願いするときに、コストだけで選ぶ人はいないはずです。専門家としての安心感を提供できれば少々高くてもお願いしたいと思うはずです。

本当の医者の能力は患者にはわからないとしても、例えば説明がわかりやすい、親切で話すと安心できる、といった医者は、患者に高い満足度を与えてくれます。それと同じような付加価値を金融機関に求める人は意外と多いのではないでしょうか。

対面で話をしながら、安心して商品を購入してもらうのと同じような満足度をネットでどうしたら提供できるか?簡単ではないかもしれませんが、そこにネット金融取引の次のブレイクスルーのヒントがあるような気がします。

今回の話のまとめ---------

■ ネット証券は金融商品の低コスト化に貢献した

■ 個人投資家の金融機関の選択基準はコストだけではない

■ コストプラスアルファの価値提供が生き残る金融機関のカギ

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
ツイッター: http://twitter.com/Shinoby7110

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧