その474 過熱する新興国、取り残される新興国

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その474 過熱する新興国、取り残される新興国

モーニングスター代表の朝倉智也さんと一緒に先週の金曜日に出版記念パーティを開催しました。会場には130人の方にお集まりいただき、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

朝倉さんが書かれた新刊「30代からはじめる投資信託選びでいちばん知りたいこと」では、新興国への投資を先進国と同じ比率で行う資産配分が提案されています。これは、過去の実績から考える配分ではなく、将来の世界経済を見通して考えた結果だと、朝倉さんご自身がおっしゃっていました。

確かに、新興国には大きな可能性があります。成長率も高く、先進国に比べ長期的には高い投資成果が期待できるのかもしれません。

しかし、現状を見ると同じ新興国というカテゴリーに入っている国でも経済状況にはかなり温度差があるようです。

■ 過熱する経済をどのように捉えたら良いか

イギリスのビジネス誌「The Economist」は新興国経済の過熱リスクについて取り上げています。
(英語のコラムですが、図を見れば各国の過熱度がわかります。)

『Some like it hot』(お熱いのがお好き?)
http://www.economist.com/node/18895150

ここでは、インフレ率、経済成長率、失業率、銀行の信用供与、実質金利、経常収支バランスを使って指数化して比較しています。

その結果、アルゼンチン、ブラジル、香港、インド、インドネシア、トルコ、ベトナムの7カ国が経済が過熱している「Sizzling Seven」(シューシュー音がするように経済が過熱している7カ国という意味でしょうか?)として、警戒を呼びかけています。

一方で、ロシア、南アフリカ、メキシコ、台湾、マレーシアといった国では過熱の兆候は無く、経済が落ち着いているという結果になっています。

■ 上昇と下落を繰り返す変動の大きな市場

この結果からわかることは2つあります。

1つは一部の国では経済が過熱気味になっており、投資には注意が必要な状況になっているということ。そしてもう1つは、国による差がかなりあり、一概に新興国というくくりでまとめて語ることが難しくなってきているということです。

しかし、経済が過熱しているからと言ってすぐにマーケットの調整につながるとは限らないところが、投資の難しさです。このまま経済の過熱がしばらく続き、さらにマーケットが上昇していく可能性もあるからです。そして、油断した頃に突然下落するのかもしれません。

いずれにしても、過去の例を見てもわかるように新興国においては、マーケットの相場変動が激しく、下落する時もかなり大きく調整することも想定しておいた方が良いと思います。

■ 新興国の投資こそ、分散と積立に行きつく

新興国の中でも温度差があり、マーケットが調整するタイミングもなかなかわからない、とすると結局は投資対象の分散と投資タイミングの分散という「2つの分散」で対応するのがベスト、ということになります。

長期的には右肩上がりの上昇が期待できる、しかし短期的には大きな相場変動も覚悟しなければならない、というのであれば、積立を下がった時にやめないようにする工夫が必要になってきます。

個人投資家の多くの方は「お熱いのお好き」なようですが、有望な投資先として人気のある国は既に投資タイミングとしては危険エリアに入っているということを改めて認識しておきましょう。

新興国を含めた外貨投資の方法については、以前「資産設計塾 外貨投資編」という本にまとめましたが、その改訂版を来月下旬に出す予定です。こちらも参考にしていただければ幸いです。

今回の話のまとめ---------

■ 新興国には今後も高い成長が期待できる

■ 過熱した市場は、調整する可能性がある

■ 時間の分散が新興国投資では特に重要

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍


株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

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