その477 ネット証券がこれまでやってきたこと、これからやるべきこと

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

その477 ネット証券がこれまでやってきたこと、これからやるべきこと

今週マネックスからのプレスリリースで発表された通り、私内藤忍はマネックス・ユニバーシティ代表を退任し、グループを離れることになりました。

役員人事に関するお知らせ
http://www.monexgroup.jp/jp/news_release/pdf/press2011_07_26_MUjinji.pdf
マネックスには創業の1999年から都合12年間在籍した訳ですが、1999年と言えば丁度株式売買手数料が完全自由化され、ネット証券が次々に創業を開始した時期でした。

当時外資系運用会社でファンドマネージャーをしていて、大学時代の同級生である松本大がマネックスを設立するというのを新聞記事で発見して、オフィスに遊びに行ったのが入社のきっかけでした。

その時、社員が4人だった会社が今や700人を超えるグループ企業に成長し、世界が変わったことを痛感します。

■ コストの引き下げが最も効果的なリターン向上の方法

この10年で、個人投資家の投資環境は大きく改善しました。株式売買手数料がネット証券の登場で10分の1以下に下がり、大きく注目されましたが、それだけではありません。

例えば、FX取引によって、為替の手数料はゼロまで下がりました。ノーロードのインデックスファンドが0.5%前後の低信託報酬で買えるようになりました。

商品の取引コストが下がり、バリエーションが増えて10年前にはプロしかできなかった取引を個人がパソコンを使って簡単にできるようになったのです。

ネット証券の最大の貢献は、このコストの削減です。インターネットを使って手数料を下げて、機関投資家レベルの金融商品を提供することは、既存の金融機関にはできなかったことです。

■ 個人投資家のニーズはどこにあるのか?

確かに、低コストの新しい金融商品は、登場した時には注目を集め、個人投資家に高い満足度を与えることができました。しかし、それだけで、幅広い個人投資家のニーズを満たすことができるのでしょうか?

投資商品のクオリティは上がっているのですが、顧客満足度は高くなっているのかが、今一つはっきりしないのです。

■ コスト競争の次は何か?

金融商品に限りませんが、消費者が求めるものは、価格や性能だけではなく、その商品・サービスを購入することによって得られる満足だと思っています。

金融商品で言えば、リターンが高い商品が必ずしも高い満足度をもたらすとは限りません。例えば、コストが高く、投資リターンが低くても、それ以外の部分で高い満足度を得られる金融サービスもあるのではないかと思います。

でなければ、銀行の窓口で投資信託を購入する人があれほど多い理由が説明できません。金融リテラシーが無いから、という理由もあるでしょうが、ネット証券を知っていても、店頭で買った方が良いと思っている人もいるのです。

ネット証券が価格破壊によって作り出した市場というのは日本の金融を変える大きな意義があったと思いますが、今からネット証券がやるべきことは何か?

コスト競争をするだけではなく、次の顧客ニーズに対応した商品・サービスを迅速に提供していくことが、生き残りのための必須条件だと思っています。

今回の話のまとめ---------

■ 個人投資家にネット証券の果たした役割は大きい

■ コストの引き下げが最も即効性のあるリターン向上方法

■ 低コストだけでは、多くの個人投資家は満足しなくなってきている

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍

株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長

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