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<質問>
最近、ギリシャの財政問題をきっかけに、ユーロが売られ、円高になっています。2008年のような金融危機がまた来ると言っている経済評論家もいて、不安なのですが、当面の投資スタンスはどのようにしたら良いでしょうか?
<回答>
ご質問ありがとうございます。今週はマネックス・ユニバーシティの内藤が回答いたします。
確かに、ギリシャにおける財政赤字が、それまで公表されていた額より大きいことが判明し、国債が大きく売られました。そして、同様の懸念がいわゆる「PIIGS」(EUの財政状態の悪いポルトガル、アイルランド、イタリア、スペイン5カ国の頭文字)でも広がり、その結果としてユーロ安になっています。
このような金融の問題については、まず問題の規模を考えることが大切です。世の中にはたくさんの金融の問題が発生していますが、小さな問題であれば、マーケット全体への影響はほとんど無いからです。例えば、日本のメガバンクが経営危機に陥ればグローバル経済に影響するでしょうが、地方の小さな信用金庫が経営破たんしても、個別の問題であれば影響はありません。
では、ギリシャの問題はどうなのでしょうか?2008年の金融危機は米国のサブプライムローンが証券化され世界中の投資家にばら撒かれたことで、危機が伝播し、金融機関の疑心暗鬼がシステムを麻痺させました。一方、今回のギリシャ問題は、欧州の銀行の貸出しがどうなるか、といった懸念もありますが、リスクの所在と大きさは、ほぼ解明されています。現時点で見る限り、更に大きなリスクが出てくる気配は無く、コントロールできる範囲の危機ではないかと思われます。
それよりも今回の問題の本質は、EUというシステムに対する市場の不安です。EU加盟国においては、金融政策は欧州中央銀行、財政政策は各加盟国という金融と財政のズレが生じています。経済環境がドイツ、フランスなどと南欧諸国で異なった場合、金融政策をどうするか。この構造的な問題がどのように調整されるのかは、今後も懸念材料として残ります。
このような危機になると、投機的な資金が市場の弱い部分を狙って動き、過剰に売り込まれることがあります。過剰に売りこまれた局面は、ファンダメンタルズを超えて割安になっており、逆に投資のチャンスと考えることもできます。ユーロに関しても、そのような局面に無いか、冷静に考えてみると良いでしょう。
大切なことは、メディアの報道や専門家の言うことを参考にしながらも、自分なりの考え方を持ち、市場の見方が過剰だと思ったらそれをチャンスにすることです。悲観論を鵜呑みにして、周囲に影響されていても、割安なものは見えず、そこからリターンは生まれません。
コラム執筆:
内藤 忍 1964年生まれ
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
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