第 183 回 日本株復活のための条件とは

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第 183 回 日本株復活のための条件とは

<質問>
日本株の低迷が続いています。いつか、日本株は復活する日がくるのでしょうか?


<回答>ご質問ありがとうございます。今週はI-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社の岡本 和久が回答いたします。

確かにこの20年間、日本株の低迷は目を覆うばかりですね。まず、なぜ、日本株がこれほど低迷したかを考えてみましょう。日本のマーケットが天井をつけたのは1989年末、日経平均で38915円(「サー、ハヤクイコー」と私は覚えています)でした。

1989年というのは色々な意味で大きな転機の年でした。まず、年初に昭和天皇が崩御され、平成が始まりました。戦後の大衆芸能をリードした美空ひばりさんも亡くなり、また、ビジネス界の神様、松下幸之助さんも他界されました。そう、そう。手塚治虫さんも逝去しました。海外では6月には天安門事件が起こり、11月にベルリンの壁が崩壊しました。何か、いままで続いていたことが大きく崩れ始めた年だったように思います。

更に、90年代に加速します。1991年のソ連消滅、1992年には中国で一時、中断されていた解放改革政策が再開され、1993年にはヨーロッパで欧州連合(EU)が発足します。そのころからインターネットを中心とする情報化が本格化しだしたのは記憶に新しいところです。つまり、90年台から「グローバル化」が急速に進みだしたのです。戦後、ほぼ半世紀近く続いていた冷戦構造が終結し、イデオロギーの対立がずっと後退したのです。

世界中の企業が、最適な生産地を選び、拡大する消費市場の恩恵を受け始めたのです。そんな世界の情勢とは裏腹に、日本はバブル崩壊の後遺症に悩み続けていました。不良債権処理、構造不況、金融機関の倒産、不安定な政治情勢など、内向きの問題で手いっぱいだったのが実情だったのです。私は日本株の長期低迷の一番の原因はグローバル化への乗り遅れだと考えています。外国企業がビジネスをする範囲をどんどん広げたのに日本は内向きの問題処理に終始していたのです。でも、そろそろ、内向き思考とは決別して目を大きく開くときです。龍馬伝で活躍している若者たちのように常識を乗り越えた高い視座での発想が必要な時期です。

よく「日本は人口も減っていくし、経済も成熟しているから成長余地も少ない。だから日本株もあまり期待できないのではないか。」という声を良く聞きます。日本だけを見ていれば、確かにそのような側面もありますが、一歩、世界という視点から見れば人口も経済も拡大しているのです。だから、グローバルに活躍の場を広げればいくらでも成長のチャンスはあるし、また、それで成功している日本の企業も増えています。

「でも、あんまり輸出をするとまた、貿易摩擦や円高圧力がかかってしまい、自分で自分の首を絞めることになるのでは?」という懸念を持つ人も多い。これは1980年代のトラウマです。当時は直接、競合相手がひしめく欧米市場に乗り込んでいったから問題が起こったのです。いまは、現地生産がどんどん進んでいますし、現地で必要としている独自の商品を提供しているのであれば、80年代の再燃はないのではないかと思います。

ここのところの円高が急激に進んでいて企業が苦しいという悲鳴も聞こえます。確かに円高でデフレ的な圧力は強まるし、目先の輸出ビジネスが苦しくなることは事実です。でも、ある意味、いままで他国に対して遅れを取っていたグローバル化で、日本が一挙にキャッチアップするチャンスを、この円高が与えてくれているということもできます。グローバルな企業グループ再構築をする上でも、資源を確保する上でも円高は強力な武器です。ただ、悲鳴をあげているだけではなく、これを天与のチャンスと考えて活用してゆくべきです。

世界経済を俯瞰したとき、アジア地域の成長が顕著であることはいうまでもありません。日本企業はアジア全体を内需ととらえる発想が必要です。つまり、「アジア内需」の取り込みです。この地域で急増している中間所得層が求める商品を、彼らも「手がでる」価格で提供していく。あるいは、日本製品の持つ高級なブランドイメージを活かして富裕層向けの商売をする。企業としての集合的な意識をアジア、あるいは世界に広げれば、各社各様、工夫をこらして「勝者」を目指すチャンスがあるのです。それにチャレンジして欲しいものです。

かつて日本企業は「エコノミック・アニマル」と呼ばれていました。最近の若いもんは「草食系」だなどと言いますが、もしかしたら、企業も「草食系」になってしまっているのではないでしょうか。ジャングルのなかで餌を獲得して、そこで生き延びていく。ジャングルの王者を目指す。そのようなマインドセットを持ってもらえば日本株式市場の将来はとても明るいだろうと思います。

少しずつですが、そのような企業が出てきているのはうれしいことです。日本の株式市場はPBRなどで見て異常なほど割安であることは言うまでもありません。これからは「割安性」が下値を支えながら、日本企業のグローバルな活躍を買うような展開になるのではないでしょうか。2009年末のファイナンシャル・タイムスは、「2019年から振り返る」という記事を掲載しています。それを見ると、これから2019年までの10年、新興国株価は半値に、アメリカ株は横ばい、日本株は倍増と予測しています。あくまでイメージ的な話ですが、日本企業がこの円高を活用してグローバル化を進めれば、十分にありうる話ではないかと思います。


コラム執筆:
岡本 和久
ファイナンシャル・ヒーラー(R)CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長
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