第 191 回 グロース株のワナ、バリュー株のワナ

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第 191 回 グロース株のワナ、バリュー株のワナ

<質問>
投資にはグロース株投資とバリュー株投資があると聞きます。いま、高成長の新興国に投資をするのはグロース株投資として魅力があると思うのですが、いかがでしょうか。

<回答>
ご指摘の通り、株式投資をする際、グロース株投資か、バリュー株投資かという分類を良く用います。端的に言えば、グロース株というのは、高い成長性に魅力がある銘柄、バリュー株は、投資価値と比べて株価が割安な銘柄です。株式投資ですから、当然、その株式が持つ投資価値を買うのは同じなのですが、グロース株の場合はずっと将来の投資価値を考えればいまの株価は安すぎるという判断、バリュー株の場合はいまの投資価値と比べてもその時点の株価は安いという判断であるということもできます。

現実にはグロース株であっても、バリュー株であっても常に行きすぎることがあるので注意が必要です。グロースでも成長力の判断が高すぎれば割高になりますし、バリュー株であっても現在の投資価値の推定が高すぎればその投資は割安ではないわけです。問題は成長力にしても投資価値にしてもこれと言った明確な数字があるわけではなく、結局、投資家が判断しなければならないということです。

例えば、2000年当時、米国では「ITバブル」と呼ばれる現象が起きました。情報化がどんどん個人の生活のなかに入り込み始め、家庭にパソコンが普及しはじめた時期でした。そして、みんなが、情報革命により我々の生活や経済の仕組みが大きく変わると実感しました。その結果、IT関連銘柄は永遠の成長株のようにみんなが思ったことからこのバブルが発生しました。どんなにPERが高くても、これら企業の成長力から考えれば問題はない。「一株当り利益などよりも、ホームページの訪問者数の方が株価判断にとって重要だ」などという議論があったものです。でも、結局、それは行きすぎとなってバブルが崩壊したんですね。

情報革命が我々の生活を大きく変えたことはまさに事実です。つまり、バブルのマーケットが想定していたことは正しかったのです。でも、株価はそれをもっと、もっと、ずっと先まで先取りしてしまっていたということです。ある意味、典型的グロース株のバブルとも言えます。

1980年代の後半、日本の株式市場もバブルとなりました。こちらはバリュー型のバブルでした。日本が世界最大の債権大国になり世界の金融の中心になる。したがって東京の様子がいまのマンハッタンのようになるだろうということで「東京マンハッタン構想」などという言葉が飛び交いました。東京湾岸のウォーターフロントの再開発がどんどん進み、いままで倉庫などにしか使われていなかった土地に高層ビルの建設計画がどんどんでてきました。その結果、雑草だらけの土地でもそこに土地を持っているということだけでそれら企業の株価がどんどん上昇したのです。

いまの東京を見ると、当時、「夢」として描かれていた姿と驚くほど類似しています。ある意味、このときもバブルが想定したことは正しかったのです。でも、投資家はその価値をずっと、ずっと高いものと推定してそこまで株価を押し上げてしまった。そして、気付いたらそれ以上、買ってくれる人がいなくなった。そして、バブル崩壊の連鎖が始まったのです。グロース株にしても、バリュー株にしても「ワナ」があるということですね。

さて、いま、中国など新興国の株価が堅調です。その背景にはやはり、これらの国々があと数十年経つと世界経済の中心的役割を果たすようになるだろうという前提があります。私は、それは多分、正しいだろうと思います。でも、注意しなければならないのは、いまの新興国の株価がどの程度、その成長を織り込んでいるかということです。この時点の株価は投資家全体のベストのコンセンサスを反映したものです。ですから、これ以上、新興国の株価が上昇を続けるためには、実際の成長がいまのコンセンサス以上になりそうだという期待が継続してでてこなければなりません。もちろん、そうなるかもしれません。でも、ただ、成長率が高く、それがまだ、まだ続きそうだという期待だけで新興国の株式投資を続けるのは注意を要すると思います。そうしないと、前提は正しかったけど、投資は失敗だったということになりかねないのです。


コラム執筆:
岡本 和久 ファイナンシャル・ヒーラー(R)

CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)

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