第 193 回 「2%のインフレが36年続けばお金の価値は半分に!」

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第 193 回 「2%のインフレが36年続けばお金の価値は半分に!」

<質問>まわりの人で「インフレになるかも?」と言って心配している人がいます。本当にインフレになるのでしょうか?また、もし、そうなるならどのように対応すればいいのでしょうか?

<回答>
長い歴史を見ればやはり物価は上昇をしています。それは、人間は常に生産できる以上のものを欲しがる「性(さが)」があるからです。この「性」ゆえに、「もっと作ろう」という生産性の向上意欲にもつながるのですが、生産性が向上するとさらにモノを欲しがる。人口も増える。ですから、やはり物価は長期的には上昇しています。今、日本はデフレ下にあると言われます。でも、長い時間をかけて資産形成をするのであれば、一時的な現象に目を奪われ過ぎて、この長期的な趨勢を見失ってはいけません。

2007~2008年ごろから世界的に起こった金融危機は、各国に巨額の財政赤字という後遺症を残しました。いま、各国とも財政を立て直すために輸出で稼ごうとしています。当然、自国通貨が安くなるのを容認する姿勢になっています。そんななかで他国から押し付けられた形で円高が進行しました。

その結果、日本にはさらなるデフレ圧力がかかっています。ただ、老荘の教えにもある通り、「あらゆる事は陰が極まれば陽となり、陽が極まれば陰となります。」欧米諸国で景気が回復し始めれば、それらの国々の金利も上昇し始め、今度はインフレ抑制が政策目標となるでしょう。円高も一服し、少なくとも一時的には円安に向かう可能性もあります。

海外がマイルドなインフレになり、円高基調が安定すれば、日本も輸入インフレから逃れることはできません。やはり少しずつ物価上昇が起こり始めるのではないかと思います。これは長い目で見ればむしろ、経済の正常化であるとも言えます。

ただ、私はものすごいインフレ、ハイパーインフレが起こる可能性は少ないだろうと思います。この地球上にはまだまだ、安い労働力を供給できる余地がたくさんあると思うからです。ですから、資産運用上、注意すべきなのはマイルド・インフレです。金融資産のなかでインフレに強いのは資産の裏づけのある株式です。

経済全体の物価動向を現すGDPデフレータは1993年から2009年の間に13.5%下落しています。つまり、自宅の引き出しに現金を入れておいても、13.5%はおカネの価値が増えていたのです。預金金利が雀の涙でも、おカネの購買力は増加していたのです。この時は、お金はただ寝かしておけばよかったのです。
しかし、マイルドであってもインフレ的な環境になれば、ただ、寝かせているだけではおカネの価値が減っていきます。おカネにも目覚めてもらい、働きにでてもらわなければならないのです。

2%という低率のインフレでも36年続くと物価は倍になり、おカネの価値は半分になります。30の方が退職後のために資産形成するのであれば当然30数年の投資期間が前提になります。ですから、手持ち資金の一部であってもインフレに抵抗力の強い株式を保有することが大切なのです。私はそのための最適な対策は日本株と外国株のインデックス投資信託やETFを同額ずつ毎月、積み立てることだと考えています。

「インフレになりそう」というとすぐに「インフレでメリットを受ける銘柄は?」という発想になりがちですが、まず、しなければならないことはインフレから価値を守ることです。その上で、さらにインフレが起こるという可能性が高いと考えるなら、インフレ・メリット銘柄を買うのも良いでしょう。でも、まず、防御を固めておくことが大切です。

コラム執筆:
岡本 和久 ファイナンシャル・ヒーラー(R)

CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)

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