今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。
<質問> 金の価格が上昇し、人気になっているようですが、金投資についてどんな考えを持っていますか?
<回答> たしかに金投資はとても人気があるようですね。テレビでも金の自動販売機までできたという報道がありました。こうなってくるとちょっと目先、警戒かなという気もしますが、ここでは少し、長期的な視点で金をポートフォリオに組み入れる際のポイントについてお話しすることにしましょう。
投資のリターンには毎年もらえる部分と、値上がりによる部分の二種類があります。前者をインカム・リターン、後者をキャピタル・リターンといい、両者を合わせたものをトータル・リターンといいます。
株式のインカム・リターンは配当金で、毎期の業績により変動します。そして、売却するときにいくらで売れるかもわからないのでキャピタル・リターンも予測ができません。一方、債券は、事前に定められた金利が支払われます。その意味では債券のインカム・リターンは予測が可能です。しかし、その時々の金利変動により債券価格は変動します。ですから、キャピタル・リターンは、株式ほどではないですが、不透明なところがあります。
概して言えばインカム・リターンは予測しやすいのに対し、キャピタル・リターンは相場次第ですから、予測が非常に難しいのです。株式のトータル・リターンは大部分がキャピタル・リターンであり、債券は大部分がインカム・リターンですから、株式はハイリスク証券、債券はローリスク証券ということができます。
普通、銀行預金は流通市場で売買されないのでキャピタル・リターンはありません。つまり、リターンはすべてインカム・リターンです。ではここで、今回の本題である金ですが、金には金利がつかないので、インカム・リターンは存在しません。あるのはキャピタル・リターン、つまり、価格変動によるリターンだけです。このように、預金⇒債券⇒株式⇒金という順番にキャピタル・リターンの構成比が高まりハイリスクになっていくということがいえます。
株式の場合には、色々な銘柄に分散投資をすることができます。円高でメリットを享受できる会社も、円安でメリットを享受できる会社も同時に持つことができます。その意味では分散によるリスク削減が可能です。しかし、金は株式のような分散はできません。そういう点では、金のリターンそのものがすべてキャピタル・リターンであるということと、金という資産クラスのなかでの分散ができないという二点において十分に分散された株式ポートフォリオよりもずっとリスクが高い投資対象であることを知っておくべきです。
ただし、金価格の変動は株式や債券のような資産価格の変動とは異なるのでその意味での分散効果はあります。さらに、インフレには強いとされているので、株式よりももう少し直接的なインフレ・ヘッジにはなるでしょう。そして、昔から「有事の金」といわれるように世界情勢が不安定なときには金が好まれます。最後に、ドルを中心とする国際通貨体制が揺らいだときも金が選好される傾向があります。分散された株式ポートフォリオは長期的に見れば投資家の持っている価値が増加していきます。しかし、金の価格上昇は単に需給関係によって決まっています。みんなが欲しがれば上がるし、いらなくなれば下がる。最近は色々な面で世の中が不安定なので、金でも買っておこうという人が増えているのではないでしょうか。
私自身、自分のポートフォリオでも金を保有しています。もう、10年ぐらい前からずっと保有しています。ただ、あくまで、コア(中核ポートフォリオ)ではなく、サテライト(衛星ポートフォリオ)の位置づけです。そして、その保有比率はかなり分散された株式ポートフォリオの1銘柄分程度の金額です。とにかく、上がっているからといって金に資産の大きな割合を投資するのはリスクが非常に高いということを知っておくべきです。
コラム執筆:
岡本 和久 ファイナンシャル・ヒーラー(R)
CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長ウェブサイトはこちら
長期投資仲間のウェブ・マガジン「インベストライフ」
マネックスからのご留意事項
「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。