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<質問>「毎月分配型のファンドが人気ですが、無分配型(注1)
よりも余計なコストがかかるとききました。具体的にどんなコストがかかっているのですか?」
<回答>ご質問ありがとうございます。まず、最初に、お断りからで恐縮なのですが、ご質問の内容は、複雑な税制や投資信託の仕組みに密接に関連する事項で、すべて厳密にお答えすると、非常に長く、かつ、わかりにくくなってしまいますので、今回は、追加型の公募株式型投資信託に個人の方が投資した場合を想定して、大まかな考え方をお話しします。
さて、お答えするうえで非常に重要になってくるのが、ご質問の中にある「コスト」を、どの範囲までと考えるかです。
もし、「コスト」を、「投資家が金融機関に支払う明示的な手数料」という比較的狭い範囲で捉えれば、「コスト」は販売手数料と信託報酬ということになり、これは、毎月分配型でも分配頻度の低い投信でも基本的に変わりはありません。もちろん、各投資信託の販売手数料や信託報酬は、運用手法や投資対象資産といった運用内容の違いによって、投資信託毎に異なることが一般的ですが、同じ運用内容であれば、分配方針の違いだけで販売手数料や信託報酬が異なることは、少ないと思います。
一方、「コスト」を、明示的な手数料だけではなく、「分配方針の違いによる機会損失」にまで広げて考えるとそれなりの違いが出てきます(注2)。それは税金と運用元本の減少に起因する違いです。
まず、税金の方ですが、払い出された分配金には税金がかかります ので、実際に投資家が受け取る金額は、その税金の分だけ減少します。一方、分配がなければ、その時点での所得は発生していないので、税金を払う必要はありません。したがって、分配金の支払いの有無によって、税金の支払額に、少なくとも「一時的」には差が出てきます。しかし、その後も含めた税金の総額に差が出るかは、相場展開や課税方法の違いによって左右されますので、必ずしも分配金が少ない方がお得とは言い切れません。
また、運用元本の減少による違いですが、今期の投資額(=基準価額×口数)は、前期の投資額に値上がり益と利息・配当収入を足し、分配金と諸費用を引いた額となりますので、運用の内容が同じで、値上がり益と利息・配当収入が同じであれば、分配金を払った分だけ、投資額は減ることとなります。そして、投資額が減るということは、次の期間に運用できる金額が減るということですので、運用内容が同じで金額当たりの収益力が同じであれば、元本が減った分だけ、期待できる収益額は少なくなります。つまり、元手が減った分だけ、稼ぐ力が減ったという考え方もできます。
このように、分配金の有無によって、明示的な手数料が異なることはありませんが、「コスト」という概念を、一時的ではあるかもしれないものの、税金の差や、投資額の減少による機会損失という範囲まで広げて考えると、分配方針によって違いが出ると考えることもできます。近年、分配金の高低によって投資信託を選定する傾向が見られるものの、より重要なのは、絶対的な分配金の高さではなく、投資信託の運用内容等によって決まってくる収益力やリスク水準です。いずれにしても、一般的な動向に左右されるのではなく、運用内容や分配金の水準を比較しながら、個々の投資信託の特徴をよく理解し、ご自身のニーズに適合したファンドを選ぶことが大切です。
(注1) 約款や目論見書において分配金は支払われないと明記している分配方針の公募投資信託はほとんど存在しないため、ここでは分配金の支払い頻度の低い投資信託という理解で説明します。
(注2)追加型公募株式投資信託の場合、投資家の個別元本によって税額が変わります。したがって、税金がかからない場合もあります。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、
連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
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