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<質問>安定型と謳っている公社債型の投資信託が大幅に基準価額を下げる要因としては
どんなことがありますか?
<回答>ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木がお答えします。
まず、ご質問の中にある「公社債型の投資信託」の定義ですが、ここでは「公社債投資信託(注1) 」と考えさせていただきます。公社債投資信託とは、株式は組入れず、国債や金融債などの公社債を中心に運用する投資信託です。具体的には、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)やマネー・マネージメント・ファンド(MMF)、中期国債ファンド、短期公社債投資信託、長期公社債投信などを含む幅広い投資信託の総称として用いる場合と、その中の長期公社債投信を指す場合などがあります。
いずれの場合も、安定的な収益の獲得を目指して運用されるものの、投資家が受け取る収益は市場での運用成果が反映される実績分配型ですので、運用会社、あるいは販売会社が、一定の収益率や元本の確保を保証するものではありません。したがって、安定的な運用を目指している公社債投信といえども、基準価額が下落する可能性は内包しており、その原因としては、以下の3つが考えられます。
まず、金利リスクです。公社債投資信託に投資した資金は、公社債を中心に投資されます。このような債券は、一般的に、金利が上がると価格が下落し、金利が下がると価格が上昇する傾向があり、特に、償還期限まで期間が長い債券に、このような特徴が顕著に見られます。したがって、公社債投資信託の基準価額の動きも、このような債券の一般的な特性を反映し、金利上昇局面では下落し、金利低下局面では上昇する傾向にあります。しかしながら、現状の公社債投資信託が実際に投資している債券は、償還期限までの期間が比較的短い債券が多いため、概ね、金利リスクは限定的なようです。
次に、信用リスクです。公社債投資信託は、一定以上(BBB格相当以上、つまり、投資適格、あるいはそれと同等とみなされるものと規定されていることが多い)の格付けに投資するという条件が付けられているケースが多いものの、一般的に、信用リスクを有する債券への投資も可能です。したがって、様々な調査を通じて、運用方針通り、安全性の高い銘柄を選んだとしても、状況によって、投資した銘柄が債務不履行に陥る懸念等が高まり、債券価格が大幅に下落する可能性は排除できません。例えば、今般、原子力発電所の事故の影響から、東京電力の社債の価格は大幅に下落しています。しかしながら、一般的に、公社債投信は信用リスクを負う銘柄への投資を一定水準以下に留めている上、数多くの銘柄に分散投資していますので、特定の銘柄で発生した信用不安が、その投資信託の基準価額の大幅な下落に直接繋がる可能性は低いと考えられます。
最後が為替リスクです。公社債投信の中には、外貨建ての債券への投資が認められている投資信託があります。外貨建ての資産に投資した場合、当然のことながら、その外貨と円との交換レートの変動により、円換算した場合の債券価格も変動します。つまり、為替リスクによって、円高が大幅に進めば、外貨建債券の円換算価格は大幅に下落します。(もちろん、逆に、円安が大幅に進めば、外貨建債券の円換算価格も大幅に上昇します。)しかしながら、大部分の公社債投資信託では、外貨建債券への投資が非常に限定的である上、もし、投資している場合でも、為替先渡し取引等によって、為替リスクをヘッジ(回避)している場合がほとんどで、実際に為替リスクをとっている公社債投資信託は非常に少ないと思われます。
したがって、以上のように考えてみると、公社債投資信託は、理論上、大幅な基準価額の下落が発生する可能性は否定できないものの、実際の問題としては、その可能性はかなり低いと考えられます。
【注1】国内籍の投資信託を想定しています。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、
連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
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