今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。
<質問>投資信託の分配金は、特別分配金と普通分配金があると知りました。最近はやりの毎月分配型はどちらの分配金がでているケースが多いのでしょうか?
<回答>ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木が、追加型公募株式投資信託に個人の方が投資される場合を想定してお答えします。
まず、普通分配金と特別分配金ですが、これは分配金を支払う側で決める区分ではなく、分配金を受け取る投資家側の課税扱いの違いによる区分です。簡単に言えば、受け取った分配金に対して課税されるものが普通分配金、課税されないものが、特別分配金です。
「分配金を受け取れば、お金を受け取ったのだから、それは当然所得になり、課税される」というふうに考える方もいらっしゃるかと思いますが、「お金の受け取り」=「所得の発生」が常に成り立つわけではありません。
投資信託の分配金は、個々の投資家の元値にあたる個別元本に関わらず、決算時の受益者に対して、口数に応じて一律に等しく分配されます。したがって、分配金支払い後の基準価額よりも、個別元本が低い投資家が受け取る分配金は「儲け」の払い出しに当たるため、所得となり、したがって、この分配金は、課税対象の普通分配金となります。しかし、同じ分配金を受け取った場合でも、その投資家の個別元本が、分配金支払い後の基準価額よりも高い場合、この投資家は、何ら「儲け」ていない、つまり、所得が発生していないので、その分配金は課税されない特別分配金となります。
この仕組みを、同じ投資信託を保有しながらも、購入したタイミング等の違いによって個別元本が異なる、AさんとBさんの場合を例に説明すると、下表の通りとなります。
この表では、Aさんも、Bさんも、一口あたり100円、同額の分配金を受け取っていますが、Aさんが受け取った分配金は、分配金支払い後基準価額の9,900円が、Aさんの個別元本9,000円より高いため、「儲け」の払い出しとなり、課税対象とされる普通分配金になります。一方、同額の分配金を同じタイミングで受領したBさんの個別元本は11,000円と、分配金支払い後基準価額の9,900円より高く、Bさんには「儲け」が発生していないため、Bさんの分配金は「儲け」ではなく、「元本」の払い出しとなり、したがって、その分配金は課税されない特別分配金となります。ただし、この場合、Bさんの個別元本は、特別分配金100円分だけ引下げられ、今後適用される個別元本は10,900円に変わることには注意が必要です。(注:普通分配金だったAさんの個別元本は変わりません。)
また、下記のCさんのように、決算時基準価額は、個別元本より高いものの、分配金支払い後基準価額は、個別元本より低くなる場合、分配金の中に「儲け」の払い出しにあたる部分と「元本」の払い出しにあたる部分が混在することとなります。その場合、「儲け」の払い出しにあたる部分は普通分配金に、「元本」の払い出しにあたる部分は特別分配金になります。
このように、分配金は口数に応じて、受益者間で公平に支払われるわけですが、個別元本と、決算時基準価額の高低によって、同じ分配金が、投資家毎に、課税対象となる普通分配金になったり、課税対象外の特別分配金になったりします。このような形で、普通分配金と特別分配金は区分されるため、毎月分配型において、どちらの分配金が多いかは、その時々の運用実績や分配金の支払方針により、時間の経過とともに変化するため、一概に、多い、少ないを論じることは、ちょっと難しいと思います。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、
連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
マネックスからのご留意事項
「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。