第237回 アプローチが異なる投資手法の考え方

今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。

第237回 アプローチが異なる投資手法の考え方

<質問>
長期分散投資を始めようかなと考えています。
FX取引をしている友人と話すと、この投資方法は、現状のような大荒れのマーケットでは古いやり方なのではないかと感じてしまいました。長期分散投資は時代遅れなのでしょうか。

<回答>

今週は『ど素人がはじめる投資信託の本』『ど素人が読める決算書の本』の著者であるジョン太郎が回答します。

まず、投資と投機は全くの別物です。投資というのは長い時間をかけて、あまり売買をせずに資産を増やそうとするものです。一方の投機というのは短い期間の売買を繰り返して資産を増やそうとするものです。FXは通常後者と言われています。

長期投資というのは、暖かいところで暮らしたいと考える人がこれから30年暮らす場所として沖縄を選んで移住し、日本で一番高い平均気温を享受することに期待するようなものです。沖縄に引っ越して最初の3日間たまたま肌寒い日に当たったりするかもしれませんし、札幌のほうが暑い日もあるかもしれませんが、過去数十年にわたる気象観測結果からは沖縄の平均気温は東京や札幌よりも高いことが分かっています。これから30年という長期で考えれば、たとえ最初の3日寒かったとしても、期間が長くなるほど過ごした期間中の平均気温は上がっていき、過去の長期の平均気温に近くなっていくはずです。

一方で、投機というのは予想が当たれば資産が増え、予想が外れれば資産が減る、これを繰り返して資産を増やしていくものです。これは「明日日本で一番暑いところはどこか」「来週日本で最も気温が高くなるのはどこか」を予想し、引っ越しを繰り返すようなものです。沖縄でずっと過ごす人の平均気温は期間が長くなるほど沖縄の平均気温に近づいていきますが、引っ越しを繰り返す人の平均気温はどこに滞在したかに依存し、過去のデータはあまり関係ありません。投機を繰り返して30年後に資産がどうなっているのかは、投機の回数や勝率だけでなく、勝ち負けの並び順や、投機する金額の並び順によって、結果が大きく変わってきます。30年間勝ち続けることは難しいと思いますが、たとえそんな奇跡を実現したとしても、一番最後の投機でそれまでの勝ち分を全て吹っ飛ばすことも可能です。

というように投資と投機というのは全くアプローチが異なります。当然ながら必要な情報も異なります。投資をする人は先ほどの例え話で言えば、気候をよく考える必要があり、短期的な天候の情報に惑わされることなく長期的な観点で観察する必要があります。一方、投機をしている人は気候のことは極端な話どうでもよくて、明日の天気、来週の天気の情報、今の気圧配置の情報、が必要になります。日々の新聞やテレビで流されている情報はほとんどが短期的な天気の話であり気候の話はありません。この点に注意する必要があります。一方が古臭いという話ではありません。

というわけで、投機をしている方と投資をしている方では話が合わないのは当然のことです。

コラム執筆:

ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。
投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。
著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある。

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