第241回 先進国と新興国の分散比率の考え方

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第241回 先進国と新興国の分散比率の考え方

<質問>

インデックスファンドで分散投資をしていました。
これまで割りと先進国への投資に重心をおいていたのですが、このところの欧州危機、米国の状況などを見ていると、先進国・新興国の分散比率の考え直したほうがよいのではないかと思います。アドバイスをお願いいたします。

<回答>

今週は『ど素人がはじめる投資信託の本』『ど素人が読める決算書の本』の著者であるジョン太郎が回答します。

投資しているアセットクラスに対する自分のスタンスや見通しが変わった場合には、資産配分を変更するべきだと思います。単に自分の考え方が変わったという場合もあれば、そのアセットクラスを取り巻く環境が大きく変わってそのアセットクラスが別物になってしまうというケースもあるでしょう。例えばグローバルREITやレアルや豪ドルが急落して初めてそのリスクの大きさを知り、そのアセットクラスに対する自分のスタンスや見方が変わる、というのが前者です。後者は、成長のサイクルが崩れてしまったヨーロッパの国の株や、人口減少と産業空洞化が進む日本の不動産、などが例としてあげられるのではないでしょうか。

今回の金融危機を境に世界の経済構造は大きく変わりました。これにより、各アセットクラスの特性も今回の金融危機の前と後で大きく変わっていると思います。もちろん、各投資家の中で先ほどの前者にあたる単なる見方の変化、というのも起こっていると思いますが、今回の金融危機の特徴の1つは後者の変化をあちこちにもたらしたという点だと思います。そのうち、最も大きな変化を遂げたアセットクラスの1つは先進国の国債ではないでしょうか。

かつての先進国国債というのは巨大な市場で大きな投資資金の受け入れ余地があるうえに、人々は信用リスクや為替リスクもほとんど意識することなく、しかもそこそこのリターンを享受できるという夢のようなアセットクラスでした。実際、2007年までの先進国国債のリスク・リターン特性は非常に優れたものでした。しかし、今回の金融危機を境に先進国国債の持つリスク・リターン特性は大きく変わりました。ソブリンリスクが懸念され、財政状態のまともな国のソブリンが地球上に少なくなってしまい、為替のボラティリティが上がり、先進国通貨が大きく売られる、ということが起きるようになりました。信用リスクによって国債利回りが上昇している国を除けば、他の先進国国債の利回りは成長鈍化を受けてどんどん低下しています。つまり、リスクは上がってリターンが低下しました。

このように、アセットクラス自体が変化してしまう、ということもありますので、その時はその時の自分の考えに従って資産配分を変更したほうがよいと思います。先進国・新興国の比率というのも同様です。かつては、<先進国:大きな市場、低リスク、そこそこのリターン><新興国:小さな市場、高リスク、高リターン>とみなされていましたが、今の世界を見渡せば先進国の中にも危ない国がたくさんあり、新興国の中に先進国以上のファンダメンタルズを持つ国があり、一方で新興国の中にも大きく成長している国とそうでない国があります。ただ、以前と異なり、今の世の中は「良さそうに見える国」は市場規模の小さな国が多く、見直しの際にはこの点に注意する必要があると思います。

コラム執筆:

ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある。

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