第253回 投資先選定の際、長期と中短期の視点で気をつけるべき視点とは

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第253回 投資先選定の際、長期と中短期の視点で気をつけるべき視点とは

<質問>

市場環境が少し良くなってきたように感じるので、株式投資を検討しています。先進国、新興国等さまざまな国や地域がありますが、投資先選定では、どのような点に注目したらよいでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

投資のリターンを考える際には、長期と中短期の両方から検討する必要があります。

まず、長期で見た場合、株式投資のリターンは、経済成長率と配当利回りとバリュエーションの変化の合計になると考えられていますので、この考え方に基づき、新興国と先進国を比べてみると、配当利回り(※1)は先進国が2.8%、新興国が2.6%、バリュエーション(※2)は先進国が14.5倍、新興国が12.1倍と、いずれも大差ない水準です。しかしながら、経済成長率見通し(※3)を見ると、先進国では2012年が1.2%、2013年が1.9%、新興国では2012年が5.4%、2013年が5.9%と、新興国が圧倒的に高い水準になっています。したがって、長期で考えた場合、先進国株式よりも新興国株式の方が高いリターンが期待できると思われます。

次に、中短期の動きとして株式上昇局面における瞬発力を見てみましょう。この観点から過去実績を比較すると、2003年3月から2007年10月の上昇局面では先進国株式(※4)が2.4倍に、新興国株式(※5)が7.7倍に、また、2009年2月から2011年4月の上昇局面では先進国株式が1.6倍に、新興国株式が2.2倍になっており、いずれも新興国が先進国を大幅に凌駕しています。したがって、中短期の瞬発力においても、新興国株式の方が先進国株式よりも高い期待が持てることがわかります。

金融市場がリスク・オフからリスク・オンの状態に徐々に変わりつつあることを考えると、今は新興国株式投資を新たに始めるにも、追加投資を行うにも、適した環境になりつつあると考えられます。

ちなみに、2003年3月から2007年10月の上昇局面で最も高いリターンを上げた国はエジプトで、18倍以上になりました。しかし、その後、リーマン・ショックやアラブの春の混乱で、一時は、最高値の三分の一以下にまで暴落しています。このように個々の新興国の株式市場は非常に極端な動きをすることがあるため、単独国ではなく、分散効果が享受できる複数国を組み合わせた投資を望ましいと考えられます。

※1 2012年2月末時点におけるMSCI WorldとMSCI EMの配当利回り

※2 2012年2月末時点におけるMSCI WorldとMSCI EMのPER

※3 2012年1月時点におけるIMF世界経済見通しにおける実質経済成長率
※4 MSCI-Worldのトータル・リターン

※5 BRICS5ヵ国のMSCI国別インデックスに均等配分したケース


コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」「資産運用の井戸端トーク」を執筆。

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