第256回 新興国の相次ぐ金融緩和~新興国の金融緩和は株式市場へのカンフル剤になり得るか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第256回 新興国の相次ぐ金融緩和~新興国の金融緩和は株式市場へのカンフル剤になり得るか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

最近、新興国が相次いで金融緩和を行っていますが、金融緩和政策は新興国の株価に、どのように影響するのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

まず、新興国の政策金利の動きを振り返ってみましょう。そもそも、リーマン・ショック以降、超低金利政策を続ける先進国を尻目に、新興国が金融引き締めを始めたのは2010年の年初からで、その後の1年半で新興国の政策金利は平均4.75%から6.0%に(※1) 、概ね1.25%引き上げられました。そして、その影響もあり、2011年、新興国株式 (※2)は現地通貨ベースで8%程度下落しました。なぜ、先進国が「超」金融緩和を続ける傍らで新興国が金融引き締めに走らなければならなかったかというと、世界金融危機後の経済の再加速があまりにも急でインフレ懸念が強まったからです。しかし、昨年後半からインフレ懸念が徐々に後退したため、各国中央銀行が引き締めスタンスを緩め始めたというわけです。

最も早く金融緩和に転じた国の一つがブラジルです。ブラジルは2011年8月から、0.5%を4回、さらに0.75%を2回、合計3.5%も政策金利(※3)を引き下げています。アジアではインドネシアが積極的に金融緩和を進め、昨年10月以降3回、合計で1%、政策金利を引き下げています。また、1月から預金準備率の引き下げで対応していたインドも4月には政策金利 を0.5%引き下げ、本格的な金融緩和に踏み切りました。さらに、インフレ動向を慎重に見極めていた中国も、11月と2月の2回、各0.5%ずつ預金準備率を引き下げています。

このように新興国の中央銀行は、昨年後半から相次いで金融緩和に舵を切ったわけですが、過去の例を見てみると、このような新興国における金融緩和は株式市場にプラスに作用するようです。

例えば、1998年からの金融緩和局面では、平均政策金利が低下し始めてからの1年間で53%、2003年からの緩和局面では、同様の1年間で59%、新興国株式(※4)は上昇しました。また、2000年からの金融緩和局面では、同様の1年間で2%下落しましたが、この間、先進国株式 が17%も下落していることを考えると、やはり金融緩和はプラスに作用していたと考えられます。そして、2008年9月からの金融緩和局面では、同様の1年間で先進国株式が7%下落する中、新興国株式は15%上昇しました。

このように過去の実績を確認してみると、新興国の金融緩和は、株式が上がりやすい環境作りに繋がる傾向があるようです。

(※1)2009年12月から2011年7月末の期間

(※2)MSCI EM 現地通貨ベース プライス・リターン

(※3)レポ金利

(※4)MSCI World 現地通貨ベース プライス・リターン 

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」「資産運用の井戸端トーク」を執筆。

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