第260回 評価損が出ている外債投資はどうすべきか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第260回 評価損が出ている外債投資はどうすべきか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

利回り益を目的に外貨建て債券を投資対象とする投資信託に投資を始めましたが、昨年来の円高で評価損が発生しています。このまま保有していいものかと悩んでいますが、何かアドバイスをお願いできますか。

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

最初に、一つアドバイスできることは、継続保有か、売却かの判断において、評価損か、評価益かという問題は、原則、考慮すべきではないということです。評価益のときは、利益確定で売却しやすく、逆に、評価損のときには、損失確定で売却しにくいという傾向が見られますが、投資判断は、純粋に今後の見通しに基づいて決められるべきで、過去に縛られるものではありません。現在の評価損は、行動経済学の埋没費用(既に発生した費用)で、これが発生すると心情的に既存方針を変えにくくなります。例として、「高い値段で買った靴が足に合わなかったものの、せっかく高いお金を出して買った(=埋没費用)ので、我慢して履く」といったようなケースが挙げられます。心情的には理解できますし、また、よくあることだとも思いますが、投資に際しては、過去には捉われず、純粋に将来の見通しに基づいて判断することをお勧めします。

そうであれば将来の見通しはどうか?ということになりますが、これは運用戦略や投資対象によって異なりますが、利回り益を目的にということですので、ここでは長期投資における一般的な考え方を説明します。

そもそも、外貨建て債券のリターンは、金利収入と債券損益と為替損益の合計で、為替損益は、購買力平価の理論値とそこからの乖離の2つに分けられます。この4つすべてがリターンに影響するわけですが、その動きには各々特徴があります。例えば、債券損益は金利水準やクレジットの変化によって変動しますが、債務不履行がなければ、最終的には額面に戻ります。また、為替の理論値からの乖離の部分は、購買力平価の周りを上下に変動する傾向があるため、長期的には、その影響は徐々に低下すると考えられます。したがって、残りは金利収入と購買力平価の理論値となりますが、購買力平価の理論値は、日本と外国の物価上昇率の差で決まりますので、結局、外貨建て債券のリターンは、長期的には、金利収入と外国の物価上昇率の差=実質金利 の水準に概ね従うことになると思われます。

長くなってしまいましたが、要するに、今後、実質金利が十分に高い水準で推移するという見通しであれば継続保有か積み増しを検討し、逆に、実質金利が十分ではない、あるいはマイナスという見通しであれば売却を考えるということになります。ただし、将来の見通しに基づく判断なので、当然、不確定な要素は残ります。また、これはあくまでも長期投資の場合の考え方なので、短期間で一定の成果を狙う場合は、為替変動の乖離部分や債券損益の変動も大きく影響する可能性もありますので、十分、注意してください。

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」「資産運用の井戸端トーク」を執筆。

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