第262回 順張り戦略、逆張り戦略、本当はどちらが効果的?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第262回 順張り戦略、逆張り戦略、本当はどちらが効果的?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

2012年5月の連休以降、世界の株価が下落していますが、そんな中、「株式は売られた時こそ、絶好の買い場」というような声をよく聞きますが本当でしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

投資戦略には、質問者の方がお聞きになったような、市場が下落している時に買い、上昇している時に売る「逆張り戦略」と、市場が下落している時に売り、上昇している時に買う「順張り戦略」があります。そのどちらが、成功確率が高いかということですが、何はともあれ、「論より証拠」、実際の市場の動きで確認して見てみましょう。

まずは、先進国株式市場(※1) 。先進国株式市場においては、株価が下落している時、つまり、株価が割安な時に投資をする方が、その後の収益率が比較的高くなるようです。例えば(※2) 、株価収益率が20倍未満で投資した場合、その後3年間の平均収益率は4.6%、平均収益率がプラスとなった割合は59%です。一方、株価収益率が20倍以上で投資した場合、その後3年間の平均収益率は-3.7%、平均収益率がプラスとなった割合は36%です。

従って、ここには割安な時に投資した方が有利という逆張り戦略の有効性が認められるような傾向が見られます。さらに、株価収益率が12倍未満で投資した場合、その後3年間の平均収益率は12.5%、平均収益率がプラスとなった割合は100%です。そして、重要な点は連休後の下落相場の「おかげ」で今年5月末の株価収益率は11.7倍まで低下しており、このようなデータに基づき、今後も同様に市場が動くと考えれば、相場が下落した今こそが投資のチャンスという考え方もできます。

さらに、このような傾向が強く見られるのが新興国株式市場 (※3)です。新興国株式市場の場合、株価収益率が11倍未満で投資した場合、その後3年間の収益率は平均で26.5%、平均収益率がプラスとなった割合は100%です。そして、新興国株式市場でも、連休後の相場下落で5月末の株価収益率は9.7倍と10倍をも下回る水準になっています。つまり、新興国株式市場は、先進国市場にも増して、今が投資のチャンスと考えられるわけです。

このように見てみると、順張りと逆張りでは、どうやら逆張り戦略の方にやや分があるようです。「禍福は糾える縄の如し」といいますが、良いことと悪いことが入れ代わりで起きるのが人の世の常です。そして、金融市場もその例外ではないようです。ただし、収益率の出方や水準は投資期間や投資対象によって大きく変わることがあること、および、この結果はあくまでも過去の実績で、将来を保証するものではないこともお忘れなく。また、株価が下落している時に買いを入れることは、それなりに勇気がいることです。収益率が相対的に高くなるのは、その勇気に対するご褒美なのかもしれませんね。

(※1)MSCI World 現地通貨ベース

(※2)先進国株式、新興国株式ともに2000年1月から2012年5月のデータで計測
(※3)MSCI EM 現地通貨ベース

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」「資産運用の井戸端トーク」を執筆。

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