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<質問>
最近の世界の株式市場の動きを見ていると、一時期好調だった新興国の伸びが鈍り、先進国との差が縮まっているように感じられるのですが、実際にはどうなのでしょうか?
<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。
さて、ご質問の先進国 と新興国 の株価の推移ですが、まずは、両者の全体での騰落率(年率)を比べてみましょう。過去10年 では先進国が+0.4%、新興国が+9.0%と、新興国が先進国を大幅に上回っています。それが、過去3年では、先進国+6.1%、新興国+5.6%とほぼ拮抗し、過去1年になると、先進国-9.9%、新興国-12.6%と逆転しています。したがって、ご質問にある通り、先進国と新興国の差が以前ほど明確ではなくなってきているという感覚は、ある意味で正しいということになります。
しかし、全体ではなく、個別国で見てみると、まったく別の世界が見えてきます。例えば、世界45カ国の株式市場の騰落率 、上位10カ国に占める新興国の数を見てみると、過去10年、5年では10カ国(つまり全部)、過去5年で8カ国、過去1年では7カ国と大半を新興国が占めている状況に何ら大きな変化はありません。一方、逆に、下位10カ国に占める先進国の数を見てみると、過去10年では10カ国(つまり全部)、過去5年で9カ国、過去3年、1年で7カ国と、やはり、こちらも下位国の大半が先進国であることに何ら変わりはありません。
そうすると、全体で見た場合と個別国で見た場合で、なぜ、こんなに大きなギャップが生じるのか??という疑問が当然出てきます。
その理由は、ここにちょっとしたカラクリがあるからなんですが、そのタネが米国です。実は、過去3年と1年の米国の騰落率は45カ国10位と非常に高い水準です。しかも、この米国の株式市場、規模が非常に大きく、先進国全体の半分以上を占めています。そのため、この米国の高い騰落率が先進国全体の騰落率を大幅に引き上げ、その結果、全体で見た場合と個別国で見た場合との間に大きなギャップが生じてしまったというわけです。
つまり、個別国の騰落率では、新興国の方が先進国よりも高い国が多いという状況に変わりはないものの、先進国の中で、米国を始めとする小数の比較的元気な国と、大部分のそうでない国との差が広がり、新興国と先進国の騰落率が一部で重なってきているというのが本当のところのようです。先進国での二極化現象には、今後注意する必要がありそうです。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
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