今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。
7月の米国雇用統計は、非農業雇用者数が16万3千人の増加と4か月ぶりに10万人以上となる一方、失業率は前月の8.2%から8.3%に上昇となり、まったく逆方向を示す数字となりました。株式市場の反応は大幅上昇でしたが、米国の景気は本当に回復しているのでしょうか?
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。確かに、7月の米国雇用統計は雇用者数と失業率が反対方向を示す結果となりましたが、米国経済が、世界金融危機によって発生した負の遺産から徐々に解放され、緩やかな回復途上にあることを示す経済指標は少なくありません。
例えば、2008年の金融危機の震源地となった住宅関連ですが、その直前には400~450万戸に積み上がった住宅在庫も、今は260万戸程度にまで縮小しています。このような在庫整理の進展を受け、一時、年間50万戸程度にまで減少していた新築住宅着工件数も2012年に入ってからは70万戸を超える水準にまで増加しています。さらに、このような住宅市場の需給改善を受け、2012年に入ってから複数の指標が住宅価格の反転、上昇を示唆するようになりました。
実際、金融危機前には1000ドルを超えていた住宅ローンの月間返済金額は、金利の大幅な低下もあり、現在、以前の半分の500ドル近辺まで減少しています。この水準は、現在、700ドル程度まで緩やかに上昇してきている平均家賃よりも低く、借りるより、買った方がお得な状況になっていることを意味しています。このように、多くの経済指標は、緩やかながらも住宅市場が回復軌道に乗ってきていることを示しています。
また、住宅市場同様、家計の財務状況も改善しつつあります。金融危機の直前には、可処分所得の14%以上にまで増加していた債務返済額は、現在10%程度まで減少し、歴史的に見ても低い水準にまで戻っています。一方、可処分所得に対する貯蓄の割合は、警戒感の高まりから金融危機直後に5%程度まで跳ね上がった後、緩やかに低下、現在、4%を割っており、家計の財布の紐が徐々に緩みつつあることを示しています。これらの指標は、家計も徐々に平時の状態に戻りつつあるということを示唆しています。
この他にも、在庫の圧縮や自動車販売の回復等の様々な指標に米国経済の緩やかな回復が表れており、米国経済の重荷は徐々に軽減され、緩やかながらも回復しつつあると考えるのが妥当ではないでしょうか。
しかしながら、欧州債務問題等もあり、現在の金融市場には、まだ、このような米国の景気回復を十分織り込んでいない部分があると思われます。この部分が投資チャンスになるわけです。例えば、米国のハイイールド債券。実際のデフォルト率は金融危機発生直後の12%程度から急低下、現在は、過去平均の半分程度の2.2%まで縮小しているにもかかわらず、米国国債とのスプレッドは、過去の平均よりも高い6~7%で推移しています。現在のような経済環境においては、このような投資機会を探すことが非常に重要になるのではないでしょうか。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
マネックスからのご留意事項
「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。