第270回 個人投資家が企業の決算を見る際に重視したほうがよいポイントとは

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第270回 個人投資家が企業の決算を見る際に重視したほうがよいポイントとは

<質問>

個人投資家が企業の決算を見る際に重視したほうがよいポイントを教えてください。

<回答>

決算書を見る際には、まず【1】貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つからその企業が今どういう状態にあるか、今期どのような活動を行ってきたかを把握する、次に【2】比較をする、という2つのステップを意識するとよいと思います。

まず【1】ですが、例えば会社からの発表で「今期はこんなことをやってきました」「今、わが社はこんな状態にあります」というのが出てきたとします。こうした発表の中には客観性や現実性を欠くものもあり得ます。極端な話、口では「財務状態は非常に健全です」と言っておきながら実は中身はボロボロということもあり得ます。しかし、決算書の数字というのはシビアです。言葉では曖昧にできたり、真実を隠してしまうことができてしまうような内容を決算書は明らかにしてくれます。まずは決算書の3表を読み解き、その会社が今どういう状態にあるのか、今期どういうビジネスを行ってきたのか、を把握しましょう。

次に【2】で比較をします。パーフェクトな決算書、理想的な決算書、というのはなかなか存在しないと思います。決算書を読む側にとって重要なのはその会社の状態を把握することなのです。そのためには、比較が有効です。

決算書を比較するうえで重要なのは横と縦の比較です。

横の比較は同業他社や似たような構造の会社との比較、同業他社比で極端に利益率が低くなっていないか、同業他社はどこも売上を延ばしているのにその会社だけ売上が落ちているなんてことはないか、研究開発費は同業他社と比べて多いか少ないか、どういう分野に積極的に投資をしているか、財務の健全性はどうか、などを比較します。

縦の比較はその会社の前期、前々期との比較です。前期・前々期と比べてどう変わったのか、売上は伸びたのか、利益は増えたか、利益率は変わったか、資本の効率性は変わったか、財務の健全性に変化はないか、バランスシートに大きな変化はないか、ビジネスに大きな変化はないか、などを比較します。

よく言われることですが、企業というのは生き物です。健康状態や能力は変化します。決算書というのはいわば、こうした企業の健康状態や能力を見せてくれる非常に便利なツールです。投資をする側としては決算書を有効に活用し、投資する・している企業の現在の状態や能力、ライバルとの優劣などをしっかりと把握したいものです。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある。

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