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<質問>
南欧諸国の国債金利が上昇する一方、日本、米国、ドイツ等世界の主要国の金利は非常に低い水準で推移するようになってしまいましたが、このような世界的な超低金利は、いつまで続くのでしょうか?
<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。ご指摘の通り、世界の主要国の金利は、政策金利の影響を強く受ける短期金利のみならず、市場取引で決まる長期金利までもが、歴史的な低水準にまで低下しています。具体的には、日本の長期国債金利は1997年10月に2%を割り、その後ほとんどの期間、0%~1%台で推移するようになってしまいました。
また、米国、ドイツ、イギリスの長期国債金利も昨年後半、相次いで1%台に突入、さらに、高金利国の代表格のオーストラリアの長期国債金利までもが1%台前半に低下しています。つまり、信用不安を抱える国以外は、軒並み、0~1%台という異常な世界的超低金利です。しかし、このような異常事態は史上初めてのことではありません。実は、過去に2回、同様の事態が起きています。
1回目は17世紀のイタリア、ジェノバです。ジェノバの長期金利は1619年に1.125%まで低下しましたが、その前後の20年間1%台で推移しました。当時のジェノバは地中海貿易で富を蓄えた金融大国であったため、異常ともいえる低金利が発生したのですが、30年戦争の戦火とともに、スペイン王家の衰退が始まると、金利は急激に上昇、1625年には4%を超え、異常な超低金利時代は終焉し、ジェノバも衰退に向かうこととなりました。
2回目は第二次世界大戦前後の米国です。1940年から1950年にかけての10年間、米国長期国債金利は1%台後半から2%台前半で推移しました。その原因は、1929年の世界恐慌後の政策金利の1%までの引き下げや、第二次世界大戦の効率的な戦費調達のための長期金利の低位誘導等の政策だと考えられます。しかし、その後、大恐慌の後遺症としてのデフレが解消し、第二次大戦による物資の逼迫もあり、物価が+6%程度まで急上昇すると、長期金利も上昇し始め、1956年には3%、1959年には4%を超え、異常な超低金利時代は終焉しました。
このような歴史を踏まえた上で、ご質問に戻りますが、今回の超低金利が、いつ終わるかを正確に予測することは困難です。しかし、過去の異常事態は、いずれも比較的長期間続いたようです。しかし、それ以上に忘れてはならないことは、このような過去2回の異常事態は、いずれも大幅な金利上昇で終焉し、長期債投資が多大な損失を蒙ったことです。そして、今、私たちは史上3回目の異常な超低金利にグローバルな規模で遭遇しています。出口はまったく見えないように思われますが、過去2回は経済環境の激変によって金利は大幅上昇に転じたこと、そして「2度あることは3度ある」という言葉を、改めて、思い起こすべきではないでしょうか。
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
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