第276回  もう1回、米国大統領選挙、共和党が勝てば株高、円安って、ホント?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第276回  もう1回、米国大統領選挙、共和党が勝てば株高、円安って、ホント?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

米国大統領選挙が近づいてきたためか、共和党候補が勝つと株高、円安が進むという話を最近耳にするのですが、そのような傾向って本当にあるのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

「論より証拠」というとおり、まずは、数字で過去実績を確認してみますと、平均的な株式市場の動きは、共和党候補が勝った場合、民主党候補が勝った場合、大統領選挙がなかった場合で大きな違いがあることがわかります。1904年からのデータで計算してみると、共和党候補が勝った場合 、10月末から翌年2月末にかけてダウ・ジョーンズ指数は平均で4.7%上昇しています。一方、大統領選挙がなかった年の同時期の平均騰落率は+3.6%、そして民主党候補が勝った場合 は平均で2.9%も下落しています。
また、ドル円為替レートにも大きな違いが見られます。こちらは1971年以降のデータとなりますが、共和党候補が勝った後の1年間 は平均3.5%の円安に、逆に民主党候補が勝った後は平均で7.5%の円高となっています。

このようなデータを見ると、市場関係者としては、ロムニー氏を応援したくなってきますが、ちょっと待ってください。早まらずに、もう少し掘り下げてデータを見てみましょう。別の側面が見えてきます。

例えば、米国株式市場の動きですが、民主党候補が勝った後の平均が低いことには、ある2ヵ年の大幅な下落が大きく影響しています。実際、この2回を除くと平均はほぼ横ばいに変わります。その2回のうちの1回は1932年に、大恐慌後、初の大統領選挙でフランクリン・ルーズベルト氏が選ばれたとき、そしてもう1回は、2008年、リーマン・ショック直後に、バラク・オバマ氏が選ばれたときです。この2回の情勢を勘案すると、民主党候補が大統領に選ばれたから株式が低迷したのではなく、逆に、株式が大きく下落するような厳しい経済環境のときには、大きな政府を志向する民主党の大統領が選ばれやすいという見方も浮かび上がってきます。

一方のドル/円レートの方も少し詳しく見ると、1976年(カーター大統領選出)と1992年(クリントン大統領選出)の後の1年で、ドル円レートが、各々、15.4%、12.0%と大きく円高に振れたことが、民主党候補勝利の後の円高傾向に大きく影響していることがわかります。そして、同期間の日経平均の動きを見ると、各々、9.3%、17.5%も上昇しています。つまり、当時は、円高が即株安に繋がる最近の経済環境とはかなり異なっていたことがわかります。

このように、市場がどう動くかは、その時々の経済情勢によって変わってきますので、いずれが勝つにせよ、単なる平均ではなく、その背景にある様々な状況を幅広く見て投資判断をすることが望ましいようです。そして、「論より証拠」とはいうものの、背景にある「論」も結構、大事なことがあるということなのでしょう。

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」「資産運用の井戸端トーク」を執筆。

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