第288回 来年の日本株上昇の材料は?政治、為替、不動産、エネルギー?

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第288回 来年の日本株上昇の材料は?政治、為替、不動産、エネルギー?

<質問>

3年ぶりに自民党政権が復活したこともあり、来年は日本株に期待したいと思っています。どのような材料に注目すべきか教えてください

<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

グローバル化の時代ですから、日本株といえども、まずは、世界全体の株価の動きから見てみましょう。世界の株価は、リーマン・ショックでの急落後、欧米の債務問題や一部新興国の成長鈍化懸念といった悪材料をこなしながら、現在まで緩やかな回復を続けています。米株などは、今や、2007年末につけた史上最高値を窺う水準です。

米国の財政の崖問題を始めとする先進国(含む日本)の債務問題は短期的に全面解決できるものではなく、今後も、時折、思い出したように取りざたされ、その度に市場は揺れるものの、解決に向けての大枠が決められているため、回復の動きが止まる可能性は低いと思われます。したがって、世界全体の株価は、上下に振れながらも、米国景気の緩やかな回復と歩調を合わせながら、来年も緩やかに上昇すると考えるのが妥当だと思われます。

このような環境下での日本株ですが、出遅れの原因となっていた、エネルギー問題、デフレ、円高、領土問題、不安定な政治状況等のマイナス要因が徐々に軽減され、世界からの遅れを取り戻すというのが来年のメイン・シナリオではないでしょうか?

まずは、政治。3年ぶりに自民党政権が復活、来年7月の選挙も含め、参院の動向次第では、2007年から5年以上継続したねじれ国会の解消が期待されます。そもそも、リーマン・ショック後、回復を続ける世界の株価から日本株が脱落したのが、2009年9月、つまり、鳩山民主党政権が発足したときからなのです。もちろん、日本株が低迷した要因は多々あるとは思いますが、海外から日本を見た場合、一つの象徴的な出来事だったことは間違いありません。

いずれにせよ、このような動きを好感する向きも少なくないうえ、安倍首相が選挙前から主張している更なる金融緩和、景気刺激策が実施されれば、追加的な買い材料になります。

そして、為替。日本株が世界の動きに取り残された要因の一つが、やはり円高です。今年もドル円で80円割れとなる水準が長らく続きましたが、投資家の積極性の回復、日本の経常黒字の縮小、日銀介入への警戒感等により、これ以上の円高には向かい難い環境になっているようです。米国の崖の問題が解決し、日本の政治の方向性が確認されれば、もう一段の円安も期待できると思われます。

そして、日本の不動産価格の底打ちとデフレ。世界の不動産市況は2010年ごろから回復し始めましたが、来年、いよいよ日本にもその波の到達が見込まれます。海外資金が日本の不動産を購入する例も増えていますし、実際、不動産価格の底打ちを示唆する指標も出てきています。不動産価格の底打ちは、デフレ克服への期待に繋がる可能性があります。

さらに今注目されているのが米国でのシェール・ガス、シェール・オイルの大増産です。11月に国際エネルギー機関が発表した「世界エネルギー見通し」では、ガスに関しては2015年にロシアを抜き、また、石油に関しても2017年にサウジアラビアを抜き、どちらも米国が世界一になると予測しています。

米国がエネルギーの供給源を輸入に頼らなくても済むようになるなど、世界のエネルギー勢力図が大きく変わるという点が両レポートの共通点ですが、エネルギーのほぼ100%を輸入に頼っている日本経済にとってもプラスの影響が期待されます。実際、原油価格は今年、既に10%程度下落 しており、他コモディティ関連資産との乖離は広がっています。

リーマン後の大底からの株価の上昇率は世界全体が64%、対する日本はわずか4% 。これまで日本株を苦しめてきたいくつかの要因が薄らぐことが見込まれる2013年、日本株のキャッチアップに期待したいと思います。

ちなみに、来年の干支は「癸巳(みずのと・み)」です。「癸」は陰の水、大地を潤す雨を意味します。また、「巳」は、脱皮する蛇になぞらえ、新たな出発、再生の象徴です。つまり、来年の干支である「癸巳」には、水を得て新規巻き返しを図るという意味があるわけです。まさに、日本株の再出発にふさわしい年です。さらに、余談ですが、蛇は蓄財の神としても信仰されており、ヘビの抜け殻を財布に入れておくと「実(巳)入りがいい」ともいわれています。

それでは、皆様、良いお年をお迎えください。

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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