第289回 この円安は一体どこまで続くのか? (JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第289回 この円安は一体どこまで続くのか? (JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

11月に衆議院が解散されてから、ドル高円安が進み、年初には一時88円台にまで乗せましたが、この円安は、どの程度まで続くのでしょうか?

<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

麻生太郎副総理が1月3日、ミャンマー訪問に同行した記者団に対して「これまでの一方的な円高が修正されつつある局面だ」との認識を示したとおり、今回の動きは、「円安進行」というより「過度な円高の修正」と捉えるのが妥当ではないかと思います。

実際、ドル/円為替レートの動きを見てみますと、円高トレンドが続いた後には、その揺り戻しで円安トレンドが続く傾向が見られます。さらに、この傾向には、円高トレンドが、大きければ大きいほど、また、長ければ長いほど、その後の円安トレンドも大きく、長いものになるという特徴も見られます。

例えば、1990年4月から1995年4月まで5年間継続したトレンドでは、ドル/円為替レートは158円台から84円台まで、実に50%近くも円高が進みましたが、この大きな円高トレンドの揺り戻しの円安トレンドも非常に大きく長なものとなり、1998年7月までの3年3ヵ月で、144円台まで円安ドル高が進行しました。

1980年以降6回の、このような「谷深ければ山高し」の関係(※1)に基づいて、2007年6月から2012年1月の55ヵ月で、123円台から75円台まで40%程度進んだ今回の円高トレンドの揺り戻しとなる円安トレンドの規模を推計すると、継続期間は3年程度、ドルの上昇率は40%程度と推計されます。もし、75円台から40%程度ドル高が進みますと、100円を余裕で超える水準です。

もちろん、この推計は、為替レートが購買力平価を中心とした中央回帰の傾向に基づいて動くという前提に立って機械的に計算した、一つの目処のような数字ですので、実際には、その時々の市場や経済、政治の個別要因を十分考慮する必要があります。

そこで、この「過度の円高修正」を起こした要因を考えて見ますと、自民党政権の復活、および、安倍新首相の経済政策への期待、日本の貿易赤字の恒常化と経常黒字の大幅な縮小等日本に関連する様々な事象が思い当たりますが、忘れてならないのが、今回の動きは為替市場のみならず、世界的な株価の上昇と同時進行している点です。

このことは、今回の動きが、日本独自の要因だけではなく世界全体の要因に起因していることを示唆しています。そこで思い出されるのが、政治状況の世界的な不確実性の後退による市場センチメントの改善です。

振り返ってみると、2012年は政治と選挙の年といえるほど、多くの国でリーダーが交代、再選された年でした。簡単に思いつくだけでも、ロシア、フランス、米国、中国、韓国、そして、日本のリーダーが確定しており、これらが将来に対する漠然とした不透明感を徐々に減退させ、市場にある種の安心感や期待感をもたらしたのではないかと考えられます。

したがって、今回の円安がどこまで進むかと考える場合、現在の世界的な市場センチメントの改善がどこまで続くかも十分考慮する必要があります。


(※1)1980年以降の6回の円高トレンド、その後の円安トレンド


コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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