第292回　投資の「はじめの一歩」注意点

＜質問＞
日経平均も1万円を回復し、相場が盛り上がっているので、口座を開設して投資を始めようと考えています。「はじめの一歩」として気をつける点、考えておいたほうがよいことなどアドバイスをいただけますでしょうか。

＜回答＞
投資を始める際に気を付けておくべき点・考えておいたほうがよいと思われる点としては、投機と投資の違いを認識すること、投機の情報に振り回されないこと、一度に投資しないこと、ではないでしょうか。

投資と投機の大きな違いというのは、投資が投資先のリターンを長い時間をかけて得ていくものであるのに対して、投機は売買を繰り返して勝ちを積み上げてお金を増やそうとするものです。投資は暮らす場所を選ぶのに気候を考えて平均気温の高いところを選ぶというのに似ています。投機は天気を予想して、来週気温が高いところを当てようとするのに似ています。また、投機は勝ち負けの並び順とその大きさ次第で成果が大きく変わります。99連勝をしていても100回目でそれまでの勝ちを全て吹き飛ばしてしまうこともあり得ます。

世の中に出回っている情報の多くは天候ではなく短期的な天気の話です。あまり大きく変動しない気候の話をしても目新しさがないからです。毎日、毎週、毎月情報を出す本などは新しい情報を出し続けなくては売れません。長い時間をかけて投資を行い中長期的に資産を増やしていこうとする人は、こうした世の中に氾濫する投機に関する情報に振り回されないように気を付けたいものです。

また、投資の知識というのは机上で勉強している時よりも、実際に投資を始めてから学ぶほうが早いスピードで身に付きます。実際に投資を始めてみると、いろいろな新しい発見があり、より具体的なイメージが掴め、さらに知識が体系的に整理されていきます。投資を始める前と後での差は非常に大きく、一度にすべてのお金を投資してしまうと、投資した後で知識のレベルが大きく上がって、「あっちを買えばよかった」「こういう配分にすればよかった」「もう少しこうすれば良かった」というのがたくさん出てくるものです。それから資産配分を変えようと思っても、一度にすべてを投資してしまっていてはなかなか資産配分を変更するのが難しくなります。投資を始める際には、粘土細工をするように少しずつ投資してきながら形を整えていくのが良いと思います。

最後に、投資するお金というのは最低でも3年は絶対に使わないというお金でなくてはなりません。3年以下の期間というのは投資をするのにはあまりにも短すぎます。過去のデータも3年以下の数字ではアテになりません。サイコロを3回しかふらなければ全て1が出ることもあり得ます。投資というのは長い時間をかけて行うものであり、期間が短ければとんでもない偶然に出くわしてしまうことも多くなります。投資する金額は慎重にお決めになるべきです。

コラム執筆：ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある。