第293回 金利は本当に上がるか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第293回 金利は本当に上がるか?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

アベノミクスを受けて、大幅な株高、円安が進行していますが、金利は一向に上昇しません。今後、日本の長期金利が上がることはあるのでしょうか?また、上がるとすれば、それは、いつごろ、どのような理由で上がるのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

ご指摘のとおり、確かに日本株は昨年6月の安値から30%(※1)以上も上昇、また、ドル円為替レートも、やはり昨年の円高のピーク、76円近辺から15円(※2)程度も円安に振れているにも関わらず、10年国債金利は相変わらず0.7%程度と昨年の最低水準からほとんど動いていません。

このように市場センチメントが大きく改善しているにも関わらず、長期金利が最低水準に張り付いたままである理由はいろいろあります。

まずは、日銀が、ゼロ金利政策の長期継続に加えて、アベノミクスを受けて量的緩和政策を、さらに強化していることが挙げられます。しかし、これだけであれば、日本と同様に、ゼロ金利政策の長期継続を明言し、かつ、強力な量的緩和政策を推進している米国の長期金利が1.8%程度と、日本より1%以上も高いことの説明がつきません。このように同様の金融政策をとっている日米で長期金利に1%以上の差があるということは、何か他に大きな理由があると考えるべきでしょう。

そして、その最も大きな理由が物価上昇率だと考えられます。日本の消費者物価(※3)は前年比0.2%下落と、依然、デフレ脱却の見通しが立っていません。一方、米国の消費者物価は前年比1.7%(※4)上昇と落ち着いてはいるものの、プラスです。この物価上昇率における2%程度の差が、長期金利の1%程度の差に繋がっています。

このように物価上昇率と金利水準には密接な関係があります。なぜなら、投資家が本当に求めているのは、名目リターンと呼ばれる表面上のリターンではなく、物価上昇分を差し引いた購買力として意味のあるリターン、つまり、実質リターンだからです。この関係を上記の例で説明しますと、米国の場合、表面上の金利は1.8%ですが、同時に物価も1.7%上昇していますので、この物価上昇分を差し引いた本当の儲け、つまり、購買力が増えた分は0.1%に過ぎません。一方、日本の長期金利は0.7%と、米国よりも1%以上も低い水準ですが、物価は0.2%下落していますので、本当の儲けは0.7%+0.2%の0.9%で、米国の0.1%よりずっと高い水準です。したがって、購買力という実質的な儲けで計った場合、日本の長期金利の方が米国よりも格段に高いということになります。

ここで、日本の長期金利が上がるかという本題に戻りますが、このように日本の長期金利は名目では非常に低いのですが、デフレのため実質では米国よりもずっと高い水準にあります。したがって、デフレ脱却で物価が上昇し始めない限り、長期金利の大幅で、かつ、安定的な上昇(※5)は想定しにくいと思われます。しかし、アベノミクスの下で日銀の新たな政策目標となった2%の物価上昇率が現実味を増すような環境になれば、長期金利が上昇する可能性が高まると思われます。


(※1)日経平均株価、2012年6月4日と2013年1月31日の比較
(※2)2012年2月2日と2013年1月31日の比較
(※3)2012年12月、全国消費者物価指数
(※4)2012年12月、米国消費者物価総合指数

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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