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<質問>
3月5日、米国のダウ・ジョーンズ株式指数が、2007年10月につけた史上最高値、14,198.10ドルを約5年5ヶ月ぶりに更新しましたが、これは米国株も、そろそろ高値圏に入ったというサインなのでしょうか?今後の展望を教えてください。
<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。
ご指摘の通り、ダウ指数は約5年5ヶ月ぶりに史上最高値を更新しましたが、この5年5ヶ月という期間は、リーマン危機後の下落率が約50%にも達したことを考えると、かなり早い回復だったといえます。雇用統計の数字などから、今回の景気回復ペースは通常より遅いという見方をよく聞きますが、2008年の世界金融危機自体が100年に一度といわれるほどの大ショックだったので、通常より遅れるのは、むしろ、自然です。
ちなみに、1900年以降、ダウ指数が20%以上下落した局面は12回ありますが、そのうち下落率が、通常の景気後退局面で起こる20~40%の範囲に収まった局面が7回、40%を超える大幅な下落となった局面が5回となります。前者の回復までの平均期間は約3年半と短めなのに対して、後者では、一気に10年超えまで長期化します。したがって、今回の回復期間5年5ヶ月は、下落率が50%近かった割には、かなり短い方ということになります。なぜ、欧州債務問題に足を引っ張られながらも、相対的に短い期間で回復できたかは、今後、様々な角度から検証する必要がありますが、少なくとも、各国政府の積極的な景気刺激策と中央銀行の超積極的な金融緩和策が一定の効果を発揮したと考えるべきでしょう。ちなみに、米国株式の回復までの最長期間は大恐慌の際の約25年です。
さて、今後ですが、今回の最高値更新時の一つの大きな特徴はバリュエーションの低さです。2013年2月末時点の米国株式の株価収益率は約15倍ですが、過去10年間の平均値は約16倍です。したがって、今般の上昇局面では利益も伸びており、利益水準との比較において、株価は、まだ、割高な状態にはなっていないということになります。ちなみに、前回最高値を付けた2007年10月時点での株価収益率は17倍、過去20年間の最高値更新時(19回ありますが)の株価収益率の平均は21倍です。もし、利益水準が変わらずに、この水準までバリュエーションが上昇すると考えれば、各々15%、40%程度上昇余地があることになります。今後、景気回復を受けて企業業績がさらに上向く可能性があることを考えれば、米国の株価は天井が近づいてきたと考えるよりも、米国株式市場は、中央銀行の超緩和政策に支えられた金融相場から、実態経済の改善を反映した業績相場に移行する局面にあり、今後も、バリュエーションと企業業績の改善を反映して、緩やかな上昇が期待できるのではないでしょうか?
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。
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