第300回 預金や債券はインフレに弱く、株式はインフレに強い?

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第300回 預金や債券はインフレに弱く、株式はインフレに強い?

<質問>
以前、インフレ経済期に入る中での注意点についてお話されていましたが、具体的に投資の選択肢をどのように変えていけばよいのでしょうか。

<回答>
一般的に預金や債券はインフレに弱く、株式はインフレに強いという傾向があります。ただし、ここで注意しておきたいのは、この話の前提は「その国のインフレに対して」ということです。日本国債のリターンは日本のインフレ率を下回る可能性が高いですが、他国の国債に投資した場合のリターンは日本のインフレ率を上回る可能性も大いにあります。また、例えば日本よりも成長率の低い国の株式のリターンは日本のインフレ率を下回るかもしれません。


預金や債券のリターンの大きな部分を占める金利収入の利回りは、その国のインフレ率を下回ることが多いということが分かっています。このため、預金や債券のリターンはその国のインフレ率を下回る可能性が高いと言われていますが、実は元本部分も債券や預金の場合は株式と異なる性格を持つため、インフレに弱い傾向があります。


債券に投資するということは債券の発行体にお金を貸すということであり、預金をするということは預ける銀行にお金を貸すということで、いずれも「借金」です。借金というのはインフレの進行にかかわらず、借りた金額を返せばそれでOKです。100万円を借りたら、例えハイパーインフレが発生してジュース1本が100万円になったとしてもジュース1本しか買えない100万円を返せば済みます。


ところが株式の場合は、借金ではないので事情が違います。例えば、30円のりんごを仕入れて30円の人件費を使って、100円のりんごジュースを作って売る会社があったとします。利益は売上100円からコストの60円を差し引いた40円、1株しか発行していなければ1株当り利益は40円、この会社の株が400円で取引されていればPER10倍です。もしここで、すべての値段が100倍になったとすると、りんごは3,000円、人件費は3,000円、りんごジュースの値段は10,000円になり、利益は4,000円、1株当り利益も4,000円になります。株価が400円のままだとPERは0.1倍になってしまいます。インフレ発生前と同じPER10倍で取引されたとしても株価は40,000円となります。こうした性格をもつことが株式がインフレに強い理由の1つです。

このような預金・債券・株式の特徴を踏まえたうえで、やはり債券にせよ、株式にせよ、インフレ率を差し引いた実質経済成長率の高い国、今後の実質経済成長率が高いと自分が考えられる国に投資するのが基本だと思います。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある。

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