第303回 史上最低金利更新のその後、金利は上がる?それとも上がらない?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第303回 史上最低金利更新のその後、金利は上がる?それとも上がらない?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

日銀による異次元超金融緩和政策を受けて4月4日に長期金利が史上最低を更新しましたが、今後の金利動向の見通しを教えてください。また、このような超低金利の中、今後も債券投資を継続していていいのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

ご質問の通り、4月4日、黒田新総裁の就任後初の金融政策決定会合で日銀は「異次元」の超金融緩和政策を決定、それを受けた長期金利(=10年国債金利)は一時0.315%まで急低下しました。この水準が2003年6月に付けた0.43%を下回ったため、長期金利の史上最低記録更新となったわけです。

さて、この異次元超緩和政策の債券市場と長期金利への影響ですが、まずは、日銀の今回の決定事項を整理してみましょう。日銀は、2年間で物価上昇率2%達成を目標に、今回の政策決定会合で、①マネタリーベース・コントロールの採用とその大幅な増加、②長期国債買入れの拡大と年限長期化、③ETF、J-REITの買入れの拡大等を決めましたが、この中で債券市場に直接に大きな影響を及ぼすのが②です。そして、②の内容は日銀が今後利付国債を年間約89兆円購入するということなのですが、この89兆円という数字は半端な数ではありません。平成13年度の政府の国債発行予定額は約127兆円ですが、実にその70%にもなります。さらに、発行額の多い2年から10年の国債だけでみると、何と80%にも達しています。つまり、今後、しばらくの間、日銀は、国債の新規発行額の70~80%を「買い占め」てしまうということです。

また、すでに発行されている国債は満期が来ると償還され、市場から消えてしまうわけですが、この消えてなくなってしまう償還分の金額が平成13年度は約91兆円あります。したがって、上述の新規発行額、約127兆円と償還分約91兆円の差が純増分の36兆円だったわけですが、異次元緩和によって日銀の国債保有額が、償還分を除いても年間約60兆円増加するため、結果的に、市中で取引される国債残高は、逆に24兆円の減少に変わります。この大幅増から大幅減への変化も金利低下の方向への大きな圧力になりそうです。

過去を振り返ると1998年の資金運用部ショック、2003年のVaRショック等金利急低下の後、急上昇に転じた局面もありましたが、過去、このような局面で金利の乱高下を主導したのは金融機関の巨額の売買でした。しかしながら、今局面では、金融機関はあまり大きく動いてはいません。つまり、今回の金利低下のリード役は日銀だということです。したがって、日銀の積極的な国債購入が継続する限り長期金利には低下圧力がかかり続けると考えられます。

では、このような環境の中で投資家はどうすべきかという点ですが、金利が、いつ、どの低下するのか、あるいは、上昇に転じるのかを正確に予測することは簡単ではありません。しかし、一つ歴史が示唆するアドバイスは、このような超低金利下での高格付け長期国債への投資は、いずれ厳しい結果を招くということです。金利が上がれば評価損が発生、上がらなくてもリターンは限りなくゼロに近い、つまり、上方ポテンシャルはほぼゼロなのに、下方リスクは非常に大きいということを十二分に意識する必要があるということです。実際、金融機関の中には、すでに債券の売却に動き始めているところもあります。このような局面では、ちょっと思い切って、株式や、利回りが相対的に高い社債、ハイイールド債券、新興国債券等への投資を検討してみてはいかがでしょうか。

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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