第309回 金利上昇時の投資の考え方

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第309回 金利上昇時の投資の考え方

<質問>

金利が上昇してきていますが、相場にはどういう影響がでてきているでしょうか?

<回答>

現在、日本とアメリカで、国債の利回りが上昇してきています。いずれも様々な要因が重なってのことですが、一時的な要因というよりも構造的な要因と言えるものが多く、当面こうした傾向が続いていく可能性はあると思います。

国債の利回り上昇の影響は直接的なものと間接的なものに分けられます。直接的な影響は、その通貨で発行されている債券の価格下落(利回り上昇)です。日本国債の利回り上昇は、円建てで発行されているあらゆる債券の利回りを上昇させます。これにより円建て債券の価格が低下します。また、米国国債の利回り上昇は、米ドル建てで発行されているあらゆる債券の利回りを上昇させ、価格を下落させます。どの程度下落するかは修正デュレーションで確認できます。修正デュレーションが7の債券であれば利回りが1%上昇すれば7%、2%上昇すれば14%、債券価格が下落します。

債券利回りはベース利回りと上乗せ利回りで構成されており、日本国債や米国国債の利回りはベース利回りにあたります。ベース利回りが上昇しても、上乗せ利回りの縮小で相殺できれば債券価格は変動しませんが、現在のように上乗せ金利が小さい場合には相殺しきれず債券利回りが上昇して債券価格の下落が起こることが懸念されます。特に日本の投信市場では米ドル建ての債券に投資するものの比率が非常に高いため、影響が広範囲に及ぶ可能性があります。

間接的な影響としては、他の金融商品の相対的な利回りの魅力を低減させることが考えられます。例えば、株が3%の配当利回り、国債が1%の利回りだった場合、もちろん両者は異なるリスク・リターンを持つ別の資産クラスですが、先ほどの状態から株が3%で国債が5%となれば株の相対的な利回り魅力が低減して、株価の下落へとつながる可能性はあります。

また、先のJ-REITが短期間で大きく下落し、続いて米国のREITが大きく下落したのも、国債利回り上昇の間接的な影響が大きな一因の一つにあります。これはハイイールド債などにも言えることですが、国債利回りの上昇はその通貨の長期金利を上昇させ、負債の大きな人や企業にとって金利負担を増大させます。REITやハイイールド債など、負債を多く抱える企業が発行する証券は、金利負担増加による業績悪化懸念から価格下落することがあり、今回の日米のREIT価格の急落にはこうした国債利回り上昇の間接的な影響が少なからずあったと見られています。

今後も日米両国の国債利回りが、構造的な要因などによって上昇し続ける場合、これらの投資への影響が続いていく可能性は十分にあると言えます。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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