第310回 米国中央銀行の金融緩和策の出口戦略は本当に株式の売り材料か?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第310回 米国中央銀行の金融緩和策の出口戦略は本当に株式の売り材料か?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

5月末から日本を始め世界の株式市場が不安定な展開となっています。その主因が米国中央銀行の量的緩和縮小等の出口戦略だといわれていますが、米国中央銀行の金融政策は、どの程度株式市場に影響するのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

今回の米国中央銀行の金融緩和策は、前例がないほど積極的なものであるため、そこからの出口戦略が、どの程度株式市場に影響するかは、正直、未知の世界となります。しかしながら、過去の米国中央銀行の金融政策の転換が、株式市場にどのように影響したかを見ることによって、今回の出口戦略の影響を類推することは可能です。

そこで、ここでは過去3回の米国中央銀行の金融引き締め局面、具体的には1994年2月、1999年6月、そして2004年6月からの利上げ局面での株価の推移を確認してみましょう。

まず、1994年2月からの局面ですが、米国中央銀行は1994年2月から1995年2月にかけて3%から6%に政策金利を引き上げました。米国株式は、この局面で、利上げ当初こそ、8%ほど調整したものの、その後は、利上げ期間を通じでほぼ横ばいの状態が続きました。そして、利上げが完了すると、待っていましたとばかりに買いが入り、その後5年間で約3倍まで値上がりしました。

次に、1999年6月からの利上げ局面ですが、米国中央銀行は1999年6月から2000年5月にかけて4.75%から6.5%まで政策金利を引き上げました。米国株式は、やはり、利上げ当初こそ7%ほど下落しましたが、その後、短期間で持ち直し、利上げ期間を通して見ると、結局、10%以上上昇しました。しかし、利上げ終了後約3ヵ月で市場は変調をきたし、今で言う、ITバブルが崩壊、その後、米国株式は2年以上調整局面を続けることとなります。

そして、3回目が2004年6月からの利上げ局面です。米国中央銀行は2004年6月から2006年6月にかけて1%から5.25%まで、実に4.25%も利上げしましたが、米国株式は、やはり、利上げ直後こそ5%ほど調整したものの、結局、10%以上値上がりしました。株価が本格的な下落局面を迎えたのは、利上げ終了後1年以上たった2007年10月のことで、ここから米国株式は世界金融恐慌に繋がる長い下落局面に突入することになります。

さて、このように過去3回の米国中央銀行の利上げに対する株式市場の反応を見てみると、3つの傾向が見て取れます。一つ目は、米国中央銀行が金融引き締めに動いた当初は、警戒感の高まりから株価が若干調整すること。2つ目は、しかしながら、株式市場がある程度利上げを織り込みむと、警戒感が薄れ、再び上昇し始めること。そして、3つ目は、株価が本格的な調整局面を迎えるのは、引き締め開始の前後でも、その最中でもなく、利上げ完了後ある程度時間が経ってからであること。

結局、中央銀行が引き締めに動く際は、金融市場に過度なインパクトを与えないよう細心の注意を払って実施するため、結果として、金融市場に大きな影響は出ない、逆に、利上げが終了し、市場の警戒心が薄れたところに思わぬ落とし穴が待ち構えているというふうには考えられないでしょうか?

つまり、中央銀行も、市場も、警戒感が高まっている時(今でしょ!)は、むしろ、安心していい時で、逆に、利上げが完了して油断している時こそ、警戒すべき時なのかもしれません。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」、「天災は忘れたころにやってくる」名言ではないでしょうか?

コラム執筆:

鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

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