第316回 米国の長期金利上昇は吉兆!?それとも凶兆!?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。

第316回 米国の長期金利上昇は吉兆!?それとも凶兆!?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

5月以降、米国の長期金利が大幅に上昇していますが、景気回復や株価に悪影響が及ぶのではないかと心配しています。実際、どの程度の影響があるのでしょうか?

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回はJPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

確かに、ご指摘の通り、このところ米国の長期金利は大幅に上昇しています。10年国債の金利で見てみますと4月末が1.67%、7月17日が2.53%なので、この2ヵ月ちょっとの間で0.8%以上も上昇したことになります。日本とドイツの10年国債金利は同期間で0.2~0.3%程度しか上昇していませんので、米国の上昇はかなり突出しています。

さて、ご質問の金利上昇が景気回復や株式市場に及ぼす悪影響ですが、基本的に長期金利は物価や経済の状況を反映して上下に変動しますので、その変化が実態経済を適切に反映したものであれば、それは「害」というよりは、むしろ、「自然な成り行き」として起こる健全な反応だと考えられます。このところの米国景気は、雇用者数の増加や不動産市況の回復に表れているとおり、緩やかな回復が継続しているので、長期金利が上昇しても、決して不思議な状況ではありません。問題は、そのペースで、いくら実態を反映したものであっても、金利があまりに急激に上昇しますと、悪影響が心配されます。しかしながら、この点におきましても、このところの複数の米国中央銀行の関係者からの発言は最近の金利上昇を抑制することを意図しているように思われますので、今のところ過度に心配する必要性は低いと思われます。(もともと、金利上昇の直接のきっかけになったのは、米中央銀行のバーナンキ議長の量的緩和縮小発言だったわけですが。)

ちなみに、1990年代と2000年以降では、長期金利と株式市場の関係が大きく変わっています。1990年代においては、金利が上昇すると株式市場は下落する傾向が見られましたが、2000年以降は、この関係がまったく逆になっています。つまり、金利上昇が株式市場の上昇を、また、金利低下が株式市場の下落を示唆するようになっています。この変化は、金利水準の変化、つまり、2000年以降の金利水準の大幅な低下とも密接に関連しているようです。もともと金利水準が高かった1990年代、さらなる金利上昇は、景気や株価にマイナスに作用したのに対して、2000年以降の低金利時代においては、景気の回復が金利上昇や株価上昇をもたらすという関係に変わったように思われます。

ちなみに、今から、ちょうど、10年前の2003年7月にも、米国景気の回復に基づく中央銀行の金融緩和政策後退見込みを反映して2ヵ月程度の間に米国の長期金利が1%程度も上昇しましたが、その後の6ヵ月で株式は約15%、しっかり上昇しました。今回も、状況は比較的似ていると思われます。つまり、結論的には、実態経済の改善が伴っている限りにおいて、ある程度の金利上昇は必ずしも株式市場に対する悪材料ではなさそうです。

コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)

JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社

投資戦略ソリューション室長

JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」https://www.jpmorganasset.co.jp/wps/portal/Column/Indexや「資産運用の井戸端トーク」https://www.jpmorganasset.co.jp/jpec/ja/promotion/column/index.htmlを執筆。

マネックスからのご留意事項

「お金の相談室」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧